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コラム

個人事業主の税金対策とは?経費や節税に関する基礎知識・制度を解説!

税金対策個人事業主アイキャッチ画像

自身で店舗経営や事業を行う個人事業主にとって、少しでも利益を手元に残すための税金対策は欠かせません。

しかし、一口に税金対策と言ってもやるべきことは多く、不安を感じる方もいるでしょう。

この記事で解説する税金対策の方法を押さえれば、納税額を下げることができます。

税金対策にお悩みの方はぜひご一読ください。

監修者(吉本貴幸)<この記事の監修者>

吉本 貴幸(よしもと たかゆき)
税理士法人吉本事務所
代表社員 税理士・行政書士

大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。

個人事業主が支払う税金の種類

税金のイメージ

個人事業主が納める税金には、所得税住民税個人事業税消費税の4つがあります。

このうち、個人事業税と消費税については一定の条件を満たした事業主が課税の対象です。

また、税金の種類が国税か地方税かによって支払い先が異なるため、個人事業主として申告・納税の義務をしっかり果たすためにも、それぞれの概要を理解しておきましょう。

所得税

所得税とは、その年の1月1日〜12月31日までの1年間で得た所得に課される国税です。

納税先は国で、個人事業主の場合は翌年の2月16日〜3月15日までに確定申告を行い、納めなければなりません。

所得額に応じて税率が変わる超過累進課税制度が採用されており、所得から各種控除を差し引いた額に課税されます。

なお、2037年までの所得については、税率2.1%の復興特別所得税も課されるため注意しましょう。

住民税

住民税とは、自分の住んでいる、または事業所を置く都道府県や市区町村に納める地方税です。

都道府県民税と市区町村民税があり、所得に応じて負担を求める一律10%の所得割と、所得に関係なく定額の負担を求める均等割という2つの税率によって納税額が算出されます。

納税する際は、確定申告後に都道府県または市区町村から送られてくる納付書にて支払うため、申告さえしていれば特別な手続きをする必要はありません。

6月に一括払いをするか、6・8・10・1月の年4回に分けて納税するかを選択できるため、自身の状況に合った方法で納めましょう。

個人事業税

個人事業税は、特定の事業を行なっている場合にのみ課される地方税です。

支払い先は都道府県となり、地域や業種ごとに税率が異なります。

納税時期は原則8月と11月の年2回で、事業所得が290万円以下の場合は課税されません。

また、納税方法としては都道府県税事務所から送付される通知に従って納めるのが通例です。

消費税

消費税は、商品やサービスの提供を受けた消費者が負担する国税です。

取引によって8%、または10%と税率が異なる複数税率が採用されています。

個人事業主は課税期間中の「課税売上に係る消費税額」から「課税仕入れに係る消費税額」を差し引いて、翌年の3月31日までに申告・納税しなければなりません。

また、前々年の売上が5,000万円以下である場合等では、「簡易課税」という簡単な計算方法が使えます。

ただし、前々年の売上高が1,000万円以下の場合は、一定の場合を除き納税義務は免除されます。

なお、前年の1月1日〜6月30日までの売上高または給与支払総額が1,000万円を超えた場合は、納税の義務が発生することもあるため注意しましょう。

個人事業主ができる税金対策9つ

税金対策の文字と硬貨

ここから個人事業主ができる税金対策を紹介します。

自分の状況に合った方法を選び、よりよい節税につなげましょう。

1.青色申告を選択する

確定申告の方法には「白色申告」と「青色申告」がありますが、青色申告をすることで最大65万円の特別控除が受けられます。

さらに、家族従業員に支払った給与を必要経費として計上できるというメリットもあり、非常に節税効果の高い申告方法です。

青色申告で最大65万円の特別控除を受けるには、次の要件を満たす必要があります。

・事業的規模の不動産所得または事業所得があること
・所得についての取引を複式帳簿で記帳していること
・確定申告書に損益計算書と貸借対照表を添付すること

また、令和2年分の確定申告からは「e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存」を行うことも要件に追加されました。

従来の要件で申告する場合の控除額は55万円で、要件に満たない、あるいは法定申告期限に間に合わなかった場合は10万円の控除が適用されます。

青色申告は帳簿方法が複雑で作成する書類も多いものの、上記以外にもさまざまなメリットがあるため、青色申告の対象であればぜひ切り替えましょう。

2.経費を正確に計上する

個人事業主が納める税金のうち、所得税・住民税・個人事業税は所得金額が納税額の算出基準になります。

課税の対象となる所得金額は、年間の売上から必要経費や所得控除を差し引いた額です。

そのため、一つひとつの経費は少額でも漏れなく正確に申告することで、課税対象所得を減額できるため、節税対策につながります。

ここからは正しい経費処理について理解を深めるためにも、経費に計上できる費用とそうでないものを確認しておきましょう。

経費に計上できる費用

事業を行ううえで必要な費用は、すべて経費に計上できます。

たとえば次のような支出が挙げられます。

・旅費交通費
・広告宣伝費
・接待交際費
・消耗品費
・地代家賃
・水道光熱費
・通信費
・給料賃金
・福利厚生費

また、税金も事業にかかわるものは経費に計上できます。

具体的には次の通りです。

・個人事業費
・消費税
・固定資産税
・自動車税
・自動車重量税
・不動産取得税
・登録免許税
・印紙税

なお、自宅を事務所にしている場合は、家賃や水道光熱費、通信費、固定資産税などの事業に使用している分を按分計算すれば、経費として計上できます。

経費に計上できない費用

生活費や娯楽費など、事業とは関係ないプライベートの出費は経費に計上できません。

また、たとえ事業にかかわる費用だとしても、必要以上に使われたものは全額が経費として認められない場合もあります。

その他、健康診断費用をはじめとする事業主自身やその家族の福利厚生に関する費用や、所得税・住民税などの税金も経費の対象外です。

3.控除制度を活用する

前述の通り、所得金額は年間の売上から必要経費と所得控除を差し引いて算出されるため、控除制度を活用すれば所得税や住民税などの課税対象所得が少なくなり、納税額をさらに下げることができます。

代表的な所得控除は次の通りです。

・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・配偶者(特別)控除
・扶養控除
・ひとり親控除
・寡婦控除
・障害者控除
・勤労学生控除
・基礎控除
・雑損控除
・医療費控除
・寄附金控除

また所得税に関しては、求められた所得税額から一定の金額を控除する「税額控除」が利用できます。
税額に対して適用される控除であるため、所得控除よりも高い節税効果が得られるでしょう。

税額控除には次のようなものがあります。

・配当控除
・住宅借入金等特別控除
・政党等寄附金特別控除

これらの控除が多ければ多いほど大きな節税効果が得られるため、経費同様漏れなく申告しましょう。

控除制度についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

相続税対策について紹介

4.少額減価償却資産の特例を受ける

少額減価償却資産とは、取得価格が30万円未満の固定資産のことです。

特例により、少額減価償却資産を購入した個人事業主は、本来税法上の耐用年数で割った金額を数年にわたって分割計上するところ、その年度にまとめて経費計上できます。

ただし、常時使用する従業員が500人以下の中小企業者かつ青色申告をしていることが条件です。

また、年度内に購入した資産が300万円を超えた部分は適用されません。

特例を受けると経費を前倒しで処理できるため、黒字の年に活用すれば高い節税効果が得られるでしょう。

5.短期前払費用の特例を受ける

短期前払費用の特例は、地代家賃をはじめ、ソフトウェアやネット利用料、生命保険料など一定の前払費用を年払いした場合に全額を当期の経費として計上できる制度です。

月払いにすると翌月の利用料を前倒しで支払うことになるため、サービスを受ける実際の月になるまでは経費にできません。

しかし、この特例を利用すればその年に経費計上できる金額が増えるため、課税対象となる所得を減額できます。

なお、短期前払費用の特例を受けるには、以下のような要件を満たす必要があると考えられます。

・年払いについて記載された契約書があること
・継続的なサービスであること
・実際に料金を支払っていること
・料金の支払い後1年以内にサービスの提供を受けていること
・支払方法や経理方法を継続すること
・売上にかかわる費用でないこと

特に支払方法や経理方法については注意が必要で、一度年払いの契約をすると以後の年度も継続しなければなりません。

そのため、短期前払費用の特例を利用する際は、実務上の煩雑さも考慮して、翌年以降も継続してこの特例の適用を受けるか検討することが非常に大切です。

6.共済制度に加入する

個人事業主が加入できる共済制度には、掛金が全額所得控除になるものがあります。

ここでは「小規模企業共済制度」と「経営セーフティ共済」の概要とメリットについて解説します。

小規模企業共済制度

小規模企業共済制度は、中小企業の経営者や個人事業主を対象とする退職金のような制度です。

月額1,000〜70,000円の任意の金額を掛金として支払えば、廃業時や退職時に給付金を受け取れます。

小規模企業共済の掛金は全額が所得控除の対象となるだけでなく、前述した短期前払費用の特例も利用できるため、節税面でも大変メリットの大きい制度と言えるでしょう。

ただし、加入するには業種や従業員数など一定の条件を満たす必要があります。

また、共同経営者の要件を満たさない家族や生命保険外務員などは加入できません。

経営セーフティ共済

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、中小企業と個人事業主が連鎖倒産の危機や経営難へと陥った場合に資金融資が受けられる共済制度です。

月額5,000〜200,000円の掛金を支払うことで、たとえば取引先企業が倒産した際は無担保・保証人なしで掛金の最大10倍、または回収困難となった売掛金債権などのどちらか少ないほうの金額を借入できます。

掛金は必要経費として全額計上できるため、税金対策にも有効です。

ただし、経営セーフティ共済に加入するには、所定の業種・資本金の額・従業員数で構成された事業を1年以上行なっている必要があります。

7.iDecoやNISAを利用する

iDeco(個人型確定拠出年金)やNISAといった制度の利用も、個人事業主にとって効果的な税金対策です。

それぞれの概要とメリットを解説します。

iDeco

iDecoは20歳以上60歳未満の国民年金・厚生年金加入者なら、誰でも加入できる年金制度で、老後資金の積立を目的としています。

掛金の拠出から運用・管理をすべて加入者自身で行い、掛金と運用益の合計額を受給できるため、実際に支払った掛金より多く受け取れることもあります。

加えて掛金全額が所得控除の対象で、運用益や受給金の一定額にも税金がかかりません。

ただし、iDeCoは原則途中解約が不可で、60歳まで引き出せないという点に注意しましょう。

NISA

NISAに加入すると、NISA口座内で毎年一定額の範囲内で購入した株式や投資信託の売却によって得た利益や配当金が非課税になります。

一般的な株式や投資信託などで得た利益には約20%の税金がかかることから、非常に節税効果の高い制度と言えるでしょう。

iDecoやNISAは節税だけでなく資産形成にも有用な制度であるため、個人事業主としてはぜひ活用していきたいところです。

8.ふるさと納税を利用する

ふるさと納税は、自分の好みや縁で選んだ自治体に対し、寄附として税金を納められる制度です。

ふるさと納税をすると、寄附先の自治体から返礼品が受け取れるほか、寄附金の2,000円を超えた部分については、原則として所得税と住民税が全額控除されます。

ただし、ふるさと納税はあくまでも前払いした税金が控除されるという仕組みであるため、納税額が減るわけではありません。

厳密には税金対策と言えませんが、返礼品がもらえるという点でお得な制度と捉えておきましょう。

9.法人化を検討する

事業の発展によって課税対象となる所得が増えてきた場合は、法人化をすることでさらに節税できる可能性があります。

なぜなら個人事業主が納める所得税は、所得が大きくなるほど税率も高くなる超過累進課税制度が採用されていますが、法人が支払う法人税はほぼ一律だからです。

法人税は以下の税率が適用されます。

区分 所得金額 法人税率
資本金1億円以下の普通法人 年800万円以下の部分 15%
年800万円超の部分 23.20%
上記以外の普通法人 全額 23.20%

(注:所得金額の平均が15億円を超えるなどの一定の要件の法人を除きます)

その他の税金を考慮すると、個人事業主としての課税対象所得が800~900万円以上であれば、法人化したほうが税率面で有利になる可能性が高いでしょう。

ただし、一概には言えないため、法人化を検討する際は税理士に相談すると安心です。

また、法人化には「役員報酬に給与所得控除が適用できる」「赤字を最大10年まで繰り越せる」「役員などを対象とした保険を損金算入できる」といったメリットもあります。

もちろん、法人化するには登記をはじめとする組織構築や経理処理などの費用と手間がかかりますが、節税効果の高さを考えれば検討すべきと言えるでしょう。

個人事業主の税金を計算する方法

電卓と硬貨 計算するイメージ

個人事業主が納める税金のうち、所得税・住民税・個人事業税は自身で計算が可能です。

ここでは、それぞれの計算方法について解説します。

所得税の計算方法

まず事業に対する所得税は、以下の計算式で求められます。

所得税額課税対象所得額(収入-経費-所得控除)×税率-税額控除

なお、所得税率は課税対象所得額に応じて変動するため、次の表で確認しましょう。

<所得税の税率一覧表(令和5年2月1日現在)>

課税対象所得額税率控除額
1,000~ 1,949,000円5%0円
1,950,000円~3,299,000円10%97,500円
3,300,000円~6,949,000円20%427,500円
6,950,000円~8,999,000円23%636,000円
9,000,000円~17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円~39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

忘れてはならないのは、先述の通り2037年までの所得には税率2.1%の復興特別所得税も上乗せされるということです。

なお、復興特別所得税の計算には次の計算式を用います。

復興特別所得税所得税額×0.021

住民税の計算方法

住民税を計算する際に注意が必要なのは、「所得割額」と「均等割額」の2つを合算しなければならないという点です。

どちらも住んでいる地域によって若干異なるものの、一般的には所得割が都道府県民税と市区町村民税を合わせて10%、均等割は5,000円に設定されています。

住民税を求める際の計算式は、次の通りです。

住民税額課税対象所得額×0.1(所得割)-税額控除+5,000円(均等割)

個人事業税の計算方法

個人事業税は、以下の計算式で求められます。

個人事業税額=(前年の課税対象所得額-事業主控除)×税率(3~5%)

税率は業種によって3~5%と変動しますが、ほとんどの業種が5%に該当します。

業種ごとの税率は都道府県のホームページを確認するとよいでしょう。

なお、個人事業税は事業を1年以上行なっている場合に一律290万円の事業主控除が適用される一方、青色申告特別控除などの適用は認められない点に注意が必要です。

個人事業主の税金対策に関するよくある質問

Q&Aのイメージ

節税の裏ワザはある?

節税に裏ワザと呼べるような方法はありませんが、上記の対策を行うことで納税額が減らせます。

より効果的な節税につなげるには、経費の種類や処理方法について正確な知識を身に着けることも大切です。

経費に計上するには何が必要?

経費を計上するには、費用が事業に使用されたことを証明できる書類が必要です。

商品・サービスの代金を支払ったときのレシート領収書は必ず受け取り、保管しておきましょう。

なお、領収書が発行されない支出や紛失した場合は、出金伝票に日付・金額・目的・サービス内容などを記入することで領収書代わりになります。

個人事業主の経費に上限はある?

基本的には、経費に計上できる金額に上限はありません。

ただし前述の通り、必要以上と判断された場合は経費に認められない可能性があります。

過度な節税は違法になる?

税法の範囲を超えてしまうような過度の節税対策は、意図的ではなくとも脱税になってしまう可能性があります。

知識がないままの安易な節税対策も、違法になりかねないため注意が必要です。

また個人の状況によって適した対策は異なるので、法に則って正しい節税を行うためには税理士のサポートを受けると安心です。

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まとめ

個人事業主が確定申告をする際は、経費を正しく計上したりさまざまな控除制度を活用したりすることで納税額を大幅に抑えられる場合があります。

また、「青色申告を選択する」「少額減価償却資産や短期前払費用の適用を受ける」「共済制度に加入する」「iDecoやNISAを利用する」「法人化を検討する」なども節税において非常にメリットの大きい方法であるため、自分の状況に合わせて積極的に行なっていきましょう。

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