【相続税対策19選】相続税で損をしない節税方法を現役税理士が解説!生前贈与・生命保険・不動産の活用ポイントも
相続税対策のためには、相続税の評価額を少なくすることや節税制度を活用することが大切です。
本記事では相続税で損をしないための方法や、生前贈与・生命保険・不動産の活用ポイント、さらに税理士事務所の見極め方などを解説します。
相続税を抑えたい方や、相続税対策を詳しく知りたい方は参考にしてください。
<この記事の監修者>
吉本 貴幸(よしもと たかゆき)
税理士法人吉本事務所
代表社員 税理士・行政書士
大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。
生前贈与を活用した相続税対策《6選》
生前贈与とは、生きているうちに特定の人物に対して財産を無償で分け与えることです。
うまく活用することで、相続時に発生する相続税を抑えられます。
ここでは生前贈与の方法を6つ紹介します。
①暦年贈与を利用する
1月1日〜12月31日の1年間(暦年)で、110万円以下の金額を複数回に分けて贈与していく方法です。
贈与税では110万円の基礎控除が認められており、暦年で贈与金額が110万円以下の場合は贈与税がかかりません。
たとえば3年に渡って繰り返し110万円以下の金額を贈与した場合、非課税での贈与が可能です。
また、贈与を行う際は「贈与契約書」を作成することで、相続時のトラブル対策や税務調査時の事実主張に活用できます。
なお改正により、令和6年1月1日以降は、相続があった場合の相続開始前の贈与の加算(110万円以下でも加算) する制度が3年から7年に延長されました。
延長分の4年以前の贈与については100万円が控除されます。
②相続時精算課税制度を利用する
相続時精算課税制度は、相続人が死亡した際に相続財産と生前に受け取った贈与財産分の税金を合わせて納める制度です。
贈与金額が2,500万円以下であれば、一時は贈与税を納めずに贈与を受けられるのがメリットです。
また、相続人が死亡した場合に相続財産と贈与財産を合わせた金額が2,500万円以下であれば、相続税は課税されません。
また、改正により、令和6年1月1日以降は相続時精算課税を選択した場合でも毎年110万円までは非課税となり、贈与者が死亡した場合でも110万円までの金額は相続財産には加算されません。
ただし、相続財産と贈与財産を合わせた金額が2,500万円以上になれば、金額に応じた相続税の納付が必要です。
贈与を受けた財産は贈与時の時価で評価されるため、時価が高いタイミングで贈与すれば節税効果が見込めるでしょう。
③贈与税の配偶者控除を利用する
贈与税には配偶者控除が設けられており、居住用不動産またはその購入資金を贈与する場合は2,000万円まで税金が控除されます。
ただし、配偶者控除を利用するためには以下の要件を満たさなければなりません。
・20年以上婚姻関係を結んでいること ・贈与を受けた翌年の3月15日までに購入した不動産に移り住み、その後も生活を続ける見込みであること |
配偶者控除によって贈与税は非課税となりますが、不動産取得税と登録免許税が発生することにも注意しましょう。
④住宅取得資金を贈与する
住宅取得資金とは、18歳(令和4年3月31日以前の取得については20歳)以上の子や孫に贈与される住宅資金です。
生前に住宅取得資金を贈与した場合、一定額が非課税になります。
ただし、非課税限度額は住宅の種類や契約締結時期の価格設定によって変動するため注意しましょう。
また、住宅取得資金はあくまで金銭での贈与に適用される制度であり、不動産で贈与された場合は課税対象となります。
令和4年1月1日〜令和5年12月31日までの限度額は以下の通りです。
省エネ等住宅・・・1,000万円 上記以外の住宅・・・500万円 |
⑤結婚・子育て資金を一括贈与する
18歳(令和4年3月31日以前の取得については20歳)以上50歳未満の子や孫に、結婚・子育て資金を一括贈与することで、一定額を非課税にすることができます。
結婚費用のみ贈与を行った場合、非課税限度額は300万円であるのに対し、結婚・子育て資金として一括贈与を行った場合は、1,000万円まで非課税です。
そのため、高い節税効果が得られるでしょう。
一括贈与の対象となる費用の内訳は以下の通りです。
・挙式費用 ・新居費用 ・妊娠、出産にかかる費用 ・保育料 ・子どもの医療費 など |
注意点として、贈与を受けた人が50歳になった時点で贈与金が残っていた場合は、残りの金額に応じた贈与税を納める必要があります。
また、贈与した人が50歳までに死亡した場合には相続税を納めなければなりません。
⑥教育資金を一括贈与する
30歳未満の子や孫に教育資金を一括贈与する場合、一定額が非課税になります。
非課税限度額は2つのケースに分けられ、それぞれ金額が異なるのが特徴です。
非課税限度額と対象となる費用は以下の通りです。
【非課税限度額】
学校に支払う教育費 | 1,500万円 |
学校以外で必要な教育費 | 500万円 |
【対象となる教育資金】
・入学費 ・教材費 ・授業料 ・制服代 ・交通費 ・塾の月謝 など |
また、非課税となるのは子や孫が30歳未満の時期のみです。
30歳になった時点で贈与金が残っていた場合、残りの金額に対する贈与税を納めなければならないため、申告漏れがないようにしましょう。
生命保険を活用した相続税対策《3選》
生命保険を活用することでも相続税の節税が可能です。
生命保険は、部分的に非課税にできたり受け取り方を工夫したりすることで課税額を軽減できる特性を持っています。
①生命保険金の非課税枠を利用する
被相続人の死亡により取得した生命保険金のうち、保険料の全額または一部を被相続人が負担していた場合は相続税の課税対象です。
この生命保険金には非課税枠が設けられており、受け取る際に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が利用できます。
たとえば、1,000万の生命保険に対して2人の法定相続人がいる場合、「500万円×2=1,000万円」が非課税となり相続税が相殺されます。
また、生命保険の金額が非課税枠を超えている場合であっても、高い節税効果を期待できるでしょう。
②保険金受取人が保険料を支払う
保険金の受取人と保険料を支払っていた人が同一人物であった場合、保険金にかかる課税の分類が所得税となり、課税額が軽減されます。
これは、被保険者の保険金を受取人が支払っていた場合、受取人の所得とみなされるためです。
なお、保険の満期返戻金にかかる所得税は次の計算式で算出されます。
受け取り金額-受け取りにかかった費用-50万円(一時所得の特別控除額)=所得税 |
死亡保険金の課税関係については以下の通りです。
(夫が死亡した場合で妻が相続人)
被保険者 | 保険料の負担者 | 保険金の受取人 | 課税区分 |
---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻 | 相続税 |
夫 | 妻 | 妻 | 所得税 |
③子や孫に生命保険をかけておく
子や孫に生命保険をかけ、保険料を親や祖父母が負担している場合、解約払戻金の金額が低いうちに相続することで節税効果が見込めます。
これは、子や孫の生命保険料を親や祖父母が負担している場合、生命保険の相続税評価額が解約返戻金の金額となるためです。
解約払戻金は、保険を途中解約した場合に受け取れる金額のことで、契約期間によって変動する特性を持っています。
契約期間が長くなるにつれて払戻金の金額が上がるため、払戻金が少額のうちに相続することで節税につながるでしょう。
不動産を活用した相続税対策《5選》
不動産は現金と比べて評価額が低くなりやすい特性があり、相続税対策にも利用できます。
もし不動産を所有している場合は、活用法を知っておくことで相続税の負担を抑えられるでしょう。
①小規模宅地等の特例を活用する
小規模宅地等の特例を活用することで、居住用宅地等を相続した場合に330㎡までの評価額を80%減額できます。
ただし、特例を活用するには取得者や宅地などの細かい要件を満たす必要があるため、事前に確認しておきましょう。
②アパートやマンションを経営する
土地を所有している場合は、アパートやマンションを経営することで相続税を減額できます。
これは、土地を「自用地」から「貸家建付地」にしておくことで、相続税評価額が下がるためです。
ただし、立地条件によってはアパートやマンションを経営しても思うように家賃収入が得られない可能性もあるでしょう。
そのため、「安定した収入が得られるか」に関して、事前の調査やシミュレーションが欠かせません。
③タワーマンションを購入する
広い土地を所有している場合は、タワーマンションを購入するのも相続税対策に有効です。
タワーマンションは、実際に購入した金額(時価)と相続税評価額の差が大きくなりやすく、相続税評価額がかなり低く算出される傾向があります。
具体的には、タワーマンションを購入することで以下のような節税効果が見込めるでしょう。
※令和4年4月19日に最高裁判所の裁決により、この「タワーマンション節税」が否認され、財産評価基本通達6項(著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する)が適用されました。
不当な節税目的でなくとも、相続税評価額と実際の時価等との乖離が大きいときは注意が必要です。
④地積規模の大きな宅地の評価を活用する
広大な土地を相続することになった場合は、「地積規模の大きな宅地の評価」を活用するのがおすすめです。
一定の条件を満たす土地であった場合に適用される評価方法で、通常の土地の評価額よりも評価額が低く算出されます。
ただし、「地積規模の大きな宅地の評価」が適用されるにはさまざま要件を満たさなければなりません。
主な要件は以下の通りです。
・3大首都圏にある500平方メートル以上の宅地 ・3大都市圏以外にある1,000平方メートル以上の宅地 |
このほかにも細かい要件が設定されているため、国税庁のホームページから確認しておきましょう
⑤収益不動産を贈与する
アパートやマンションなどの収益不動産を所有している場合は、なるべく早い段階で贈与することで相続税を抑えることが可能です。
収益不動産からは毎月の家賃収入が発生するため、時の経過と共に相続財産が増加します。
相続財産の額によって相続税が決められるため、相続財産が増える前に贈与することで節税につながるでしょう。
その他の相続税対策《5選》
ここまで生前贈与・生命保険・不動産による相続税対策を解説しましたが、それ以外にも相続税を抑える方法があります
①家族信託を利用する
家族信託は被相続人である「委託者」が財産を家族などの「受託者」に預け、財産の管理や運用において得られた利益を「受益者」が得る仕組みです。
家族信託そのものに節税効果はありませんが、贈与税の非課税枠や不動産購入などの施策を委託者が実施することで、間接的に節税効果が見込めるでしょう。
②養子縁組を活用する
養子縁組を行うことで、非課税額を増やすことが可能です。
養子縁組は血縁関係にない者の親子関係を認めるもので、養子縁組を行うことで法定相続人が増加します。
法定相続人の増加によって得られる節税効果は以下の通りです。
・生命保険金等の非課税額の増加 ・死亡退職金等の非課税額の増加 ・相続税の基礎控除額の増加 ・1人当たりの取得金額が減ることによる税率の減少 |
法定相続人と扱われる養子の数は下記のように制限されています。
・被相続人に実の子供がいる場合・・・1人まで ・被相続人に実の子供がいない場合・・・2人まで |
ただし、「養子縁組によって税負担を不当に減少させている」とみなされた場合は上記の範囲内であっても法定相続人に含められません。
加えて養子縁組はトラブルにつながりやすい側面もあるため、慎重に検討するのがよいでしょう。
③死亡退職金の非課税枠を利用する
会社から受け取る死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。
たとえば、死亡退職金が1,500万円で法定相続人が2人であった場合は、非課税枠が「500万円×2=1,000万円」となり、差し引き500万円が課税部分です。
なお、死亡後3年以降に受け取った死亡退職金には非課税枠が適用外となり、所得税を納める必要があります。
④墓石や仏具を生前に購入する
墓跡や仏壇、仏具は相続時に非課税となるため、生前に購入しておくことで相続時の課税額を抑えられます。
もし生前に墓跡や仏壇などを一式で購入していた場合、形式上では相続財産に含まれないため相続税が増額されません。
ただし、相続後に購入する場合は課税対象となることや、生前に購入した代金が未払いであった場合は支払い義務も引き継がれる点に注意しましょう。
⑤相続発生前に税理士報酬を支払う
相続の際に依頼する予定の税理士が決まっている場合は、相続が発生する前に報酬を一部支払っておくことで相続税対策になります。
事前の報酬支払いにより相続財産を減らせるため、実際に相続が発生した際の相続税を減額することが可能です。
手元に現金が多い場合の相続税対策とは
相続財産に現金が多い場合は、どのようなことに注意しながら相続税対策をするのがよいのでしょうか。
【前提】現金にかかる相続税は高額になりやすい
現金で相続を行った場合、相続税が高額になりやすいため節税効果はほとんど期待できません。
これは、現金と不動産では相続税の評価方法に大きな違いがあるからです。
現金の場合は、実際の金額がそのまま相続税評価額となりますが、不動産の場合は購入した金額よりも相続税評価額が低くなる特性があります。
そのため、不動産等を利用する場合と比べ、現金の相続は納税負担が大きくなりやすいのです。
相続税をかけずに現金のまま残す方法とは
もし現金の相続税負担を抑えたい場合は、前述した「死亡退職金の非課税枠」や「特例を利用した生前贈与」を行うとよいでしょう。
特に生前贈与は相続時に慌てずに済むだけでなく、現金のままでも非課税になる措置が多いため、相続税を抑えやすい方法といえます。
相続税対策を税理士事務所に依頼するときに重視したいポイント
相続税対策を税理士事務所に依頼する際には、以下4つのポイントを重視しましょう。
相続税対策や申告の実績が豊富か
相続税対策や申告の実績が豊富な税理士事務所は、相続税に精通している可能性が高く、適切な減税対策をアドバイスしてもらえるでしょう。
相続税申告では、利用する特例や控除などによって納税額が大きく変わってくるため、実績豊富な事務所に依頼するのがおすすめです。
ホームページに相続に関する実績が掲載されていることもあるため、依頼前に確認してみるとよいでしょう。
税務調査に対応しているか
税務調査に対応している税理士事務所を選ぶことも大切です。
相続税は高額になりやすく、税務調査が行われるケースも少なくありません。
特に生前贈与を行った場合は、贈与契約書等を残しておかなければ贈与手続きが認められない恐れもあります。
そこで、税理士事務所に依頼すれば、税務調査で指摘されにくい内容で相続税対策を進められるというわけです。
二次相続を考慮してもらえるか
「一時的な節税対策だけでなく二次相続を視野に入れた提案をしてもらえるか」も税理士選びの重要な要素です。
たとえば、配偶者は「配偶者軽減」により相続税が軽減されやすく、財産が1億6,000万円以下であれば相続税が発生しません。
そのため、配偶者への財産分配を多くしようとする税理士もいます。
とはいえ、配偶者の相続財産が多くなりすぎると、配偶者が亡くなった場合の相続税が高額になるリスクがあります。
税理士事務所を選ぶ際には、「二次相続まで考慮してもらえるか」もあわせて確認しておきましょう。
税理士以外に専門家が在籍しているか
税理士以外の専門家が在籍していることも、税理士事務所を選ぶポイントの1つです。
相続税対策を行うためには、税に関する知識だけでなく生命保険や不動産などの知識も求められます。
そのため、税理士事務所に「保険外交員」や「不動産鑑定士」などの各分野に精通した専門家が在籍している場合は、より広い視野で相続税対策を提案してもらえるでしょう。
相続税対策のお悩みは「税理士法人吉本事務所」にご相談ください
税理士法人吉本事務所は、税理士をはじめ複数の専門家が連携しながら相続関連のお悩みに対応します。
現金だけでなく生命保険や不動産などの観点から、総合的に相続税対策を行うことが可能です。
利用できる制度を積極的に活用しながら、お客様の要望に寄り添った節税対策をアドバイスいたしますので、相続税対策にお悩みの際はぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
相続税対策は生前から準備しておくことが大切であり、生命保険や不動産を積極的に活用することで大きな節税効果を期待できます。
節税に利用できる制度も豊富なため、専門知識の有無で課税額にも差が生まれやすいでしょう。
少しでも節税につなげたい場合は、まずは税理士事務所に相談するのがおすすめです。