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コラム

サラリーマンの税金対策は年収いくらから?有効な節税方法や得する年収も税理士が解説

税金 対策 年収 アイキャッチ画像

税制改正により、一定の年収があるサラリーマンは税負担が大きくなりました。
ただし、税金対策に対して正しい知識を身に付けることで節税が可能です。

本記事では、サラリーマンに有効な節税方法得する年収について解説します。
自分に適した税金対策を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

監修者(吉本貴幸)<この記事の監修者>

吉本 貴幸(よしもと たかゆき)
税理士法人吉本事務所
代表社員 税理士・行政書士

大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。

サラリーマンの税金対策は年収800万円がボーダーライン

上を指差した手

働き方改革の後押しとして、2020年より「給与所得控除」と「基礎控除」の控除額が変更されています。
急激に負担が増加しないよう配慮はされているものの、年収が850万円以上のサラリーマンは税負担が大きくなりました。
そのため、税金対策を積極的に考えるべき年収のボーダーラインは、800万円くらいかと言えるかもしれません。

なお、年収が800万円以下のサラリーマンでも、税金対策によって税負担を軽減できます。
正しい知識を身に付けて、実用的かつ効果的な方法を取り入れましょう。

年収による所得税率の違い

所得税は個人の所得に対して課税される税金で、所得に応じて税率が異なります。

【所得税率】

課税所得税率控除額
1,000~1,949,000円5%0円
1,950,000~3,299,000円10%97,500円
3,300,000~6,949,000円20%427,500円
6,950,000~8,999,000円23%636,000円
9,000,000~17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000~39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

所得税率は所得が上がれば税率も上がる「超過累進税率」が採用されており、年収が高い人ほど税負担も大きいケースが一般的です。
そのため、サラリーマンが所得税を節税するには、課税所得を小さくする必要があります。

所得税は年収いくらから?

給与所得のみの場合は、年収が103万円を超えると所得税が課税されます。(基礎控除のみの場合)
そのため、年収を103万円以下に抑えれば、所得税は課税されません。

なぜなら、所得税額は1年間の所得金額から所得控除額を差し引いた課税所得に税率を適用して算出されますが、年収が103万円以下の場合はすべての給与所得者に適用される「給与所得控除」と「基礎控除」を差し引くと、課税所得が0円になるからです。

所得税額=課税所得(1年間の所得金額-所得控除額)×税率-税額控除

なお、給与所得控除と基礎控除以外に控除制度の適用を受けることで、年収が103万円を超えても所得税が課されない場合もあります。

給与所得控除と基礎控除の控除額は、以下の表を参考にしましょう。

【給与所得控除】

給与等の収入金額給与所得控除額
1,625,000円以下550,000円
1,625,001~1,800,000円収入金額×40%-100,000円
1,800,001~3,600,000円収入金額×30%+80,000円
3,600,001~6,600,000円収入金額×20%+440,000円
6,600,001~8,500,000円収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円

【基礎控除】

合計所得金額控除額
2,400万円以下48万円
2,400万円超 2,450万円以下32万円
2,450万円超 2,500万円以下16万円
2,500万円超0円

サラリーマンの税金対策にはどんな方法がある?

電卓と硬貨 計算するイメージ

サラリーマンの税金対策は、控除制度を利用して課税所得を小さくする方法が有効です。

ここからは、サラリーマンが利用できる控除制度を解説します。
制度によって要件が異なるため、個々の状況に合わせて検討しましょう。

1.医療費控除

医療費控除は、1年間で支払った医療費が一定額を超える場合に最高200万円の控除を受けられる制度です。
同一生計の配偶者や親族のために支払った医療費があれば、すべて合算できます。

控除額の計算方法は、以下の通りです。

医療費控除額=(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円

※所得金額が200万円以下の場合は、10万円ではなく所得金額の5%

また、医療費控除を受けるには、確定申告書に医療費控除の明細書の添付が必要です。
領収書の保存期間は確定申告の期限から5年間と定められているため、期間中は捨てずに保管しておきましょう。

2.セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制は、対象の医薬品を購入した費用が1年間で12,000円を超える場合に、超えた金額分(最高88,000円)の控除を受けられる制度です。
同一生計の配偶者や親族のために支払った費用があれば、すべて合算できます。

ただし、健康の維持または増進を目的に特定健康診査や予防接種などを行う個人が対象で、医療費控除とは併用できません

また、セルフメディケーション税制は令和8年度分まで延長され、同時に令和4年度分から対象の医薬品が拡充されています。
具体的な対象品目は、厚生労働省のホームページから確認できます。

3.生命保険料控除

生命保険料控除は、生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に最高12万円の控除を受けられる制度です。

控除額は保険の契約日に基づいて以下の方法で算出され、各保険料の控除額を合算した金額が控除されます。
ただし、加入している保険の内容や期間などによって適用を受けられない場合もあるため、対象の範囲には注意しましょう。

【新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)】

年間の支払保険料等控除額
20,000円以下支払保険料等の全額
20,000円超 40,000円以下支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超一律40,000円

【旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)】

年間の支払保険料等控除額
25,000円以下支払保険料等の全額
25,000円超 50,000円以下支払保険料等×1/2+12,500円
50,000円超 100,000円以下支払保険料等×1/4+25,000円
100,000円超一律50,000円

また、新契約と旧契約の両方に加入している場合は、旧契約の支払保険料等の金額に応じて下記の控除額が適用されます。

(A)新生命保険契約等に係る保険料控除額 (上記「新契約」の計算方法)
(B)旧生命保険契約等に係る保険料控除額 (上記「旧契約」の計算方法)
(C)(A)+(B)=××× >または≦ 40,000円 ∴少ない金額(※)

※(C)の金額が4万円を超える場合は、(B)の金額を控除できます。

4.地震保険料控除

地震保険料控除は、一定の地震保険料を支払った場合に最高5万円の控除を受けられる制度です。
納税者または同一生計の配偶者や親族が所有する、常時居住の用に供する家屋や生活用動産(家具や衣服、30万円以下の貴金属など)が対象の保険契約に対して適用されます。

控除額は、以下の通りです。

(1)【地震保険料控除額】

年間の支払保険料等控除額
50,000円以下支払金額の全額
50,000円超一律50,000円

(2)【旧長期損害保険料】

年間の支払保険料等控除額
10,000円以下支払金額の全額
10,000円超 20,000円以下支払金額×1/2+5,000円
20,000円超15,000円

(3)(1)と(2)の両方がある場合

控除額
(1)と(2)のそれぞれの方法で計算した金額の合計額(最高50,000円)

※一の損害保険契約等または一の長期損害保険契約等に基づき、地震保険料および旧長期損害保険料の両方を支払っている場合には、納税者の選択により地震保険料または旧長期損害保険料のいずれか一方の控除を受けることとなります。

5.特定支出控除

特定支出控除は、特定支出の合計額が給与所得控除額の半分(最高125万円)を超える場合に、超えた金額分の控除を受けられる制度です。
特定支出には、以下の費用が挙げられます。

・通勤費
・職務上の旅費
・転居費
・研修費
・資格取得費
・帰宅旅費
・勤務必要経費(図書費や衣服費、交際費など)

なお、特定支出控除を受けるには、給与の支払者による証明書明細書を添付して確定申告を行う必要があります。

6.iDeCo

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で拠出・運用した掛金と運用益の合計額を原則60歳以降に受け取れる私的年金の制度です。

加入すると掛金全額の控除を受けられるほか、運用益も非課税のため、税金対策と資産形成の両面で有効と言えます。
さらに、給付額を受け取る際は「公的年金等控除」または「退職所得控除」を受けられるのもメリットです。

7.NISA

NISAは、NISA口座内での投資によって得た利益や配当が非課税になる制度です。
iDeCoのように掛金の控除は受けられませんが、本来なら投資によって利益や配当を得ると約20%の税金が課されるため、投資初心者でも始めやすいでしょう。

現行(2023年)のNISAは、「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類で、種類によって詳細が異なります。

種類一般NISAつみたてNISAジュニアNISA
対象者18歳以上18歳以上17歳以下
非課税保有期間5年20年5年
年間非課税枠120万円40万円80万円
投資可能商品上場株式
ETF
公募株式投信
REITなど
長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託一般NISAと同じ
備考年単位の選択制年単位の選択制2023年末で終了

また、2024年以降は制度の内容が見直され、新しいNISAが導入される予定です。

8.ふるさと納税

ふるさと納税(寄附金控除)は、自分が住んでいる自治体以外に寄付ができる制度です。
お礼に各地の名産品などが受け取れるほか、寄付額のうち2,000円を超えた金額分が上限額まで所得税と住民税から控除されます。
ただし、実際に支払った分が控除される仕組みのため、節税目的ではなくお得な制度として利用しましょう。

控除額の計算方法は、以下の通りです。

寄附金控除額=下記①または②のどちらか少ない金額-2,000円
①1年間の寄付額
②総所得金額等の40%相当額

また、個人の収入や家族構成によって控除上限額が異なる点には注意しましょう。

9.配偶者控除

配偶者控除は、納税者の所得金額が1,000万円以下かつ一定の要件を満たす配偶者がいる場合に控除を受けられる制度です。
一定の要件とは、以下が挙げられます。

・民法の規定による配偶者であること
・納税者と同一生計であること
・1年間の所得金額が48万円(所得が給与所得のみの場合は103万円)以下であること
・青色申告者の事業専従者として給与を受け取っていない、または白色申告者の事業専従者ではないこと

控除額は、納税者の所得に応じて下記が適用されます。

納税者の合計所得金額 控除額
一般控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超 950万円以下 26万円 32万円
950万円超 1,000万円以下 13万円 16万円

※配偶者の年齢が12月31日時点で70歳以上の場合は、老人控除対象配偶者に該当

また、配偶者の所得金額が48万円を超えていても、133万円以下であれば「配偶者特別控除」を受けられる場合があります。

10.扶養控除

扶養控除は、一定の要件を満たす扶養親族がいる場合に控除を受けられる制度です。
一定の要件とは、以下が挙げられます。

・配偶者以外の親族であること
・納税者と同一生計であること
・1年間の所得金額が48万円(所得が給与所得のみの場合は103万円)以下であること
・青色申告者の事業専従者として給与を受け取っていない、または白色申告者の事業専従者ではないこと
・扶養親族の年齢が12月31日時点で16歳以上であること

控除額は、扶養親族の年齢に応じて下記が適用されます。

区分 控除額
扶養対象扶養親族(16歳以上の方) 38万円
特定扶養親族(19~22歳以下の方) 63万円
老人扶養親族(70歳以上の方) 同居している場合 48万円
上記以外の場合 58万円

なお、老人扶養親族が入院している場合は、長期間にわたる入院でも同居に認められますが、老人ホームなどへ入所している場合は同居として扱えません。

11.住宅ローン控除

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用して住宅の新築や購入、増改築をする場合に、一定の要件を満たすことで控除を受けられる制度です。
適用要件をはじめ、控除額の計算方法や控除期間は、住宅の区分と居住年に応じて細かく設定されています。

住宅ローンを利用する予定がある場合は、事前に調べておくとよいでしょう。

12.寡婦控除

寡婦控除は、女性が一定の要件を満たす場合に27万円の控除を受けられる制度です。
一定の要件とは、以下が挙げられます。

・ひとり親に該当しないこと
・合計所得金額が500万円以下であること
・①または②のどちらかに該当すること

①夫との離婚後に再婚しておらず、子以外の扶養親族がいる
②夫との死別後に再婚していない、または夫の生死が不明である

ただし、婚姻関係と同様と認められる相手がいる場合は適用を受けられません。
なお、男性を対象とした「寡夫控除」は、令和2年分から「ひとり親控除」に変更されています。

13.ひとり親控除

ひとり親控除は、離婚や死別、未婚など婚姻をしていないまたは配偶者の生死が不明かつ一定の要件を満たす場合に35万円の控除を受けられる制度です。
女性と男性ともに対象で、下記の要件を満たす必要があります。

婚姻関係と同様と認められる相手がいないこと
同一生計の子がいること(所得が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族ではない場合に限る)
合計所得金額が500万円以下であること

14.雑損控除

雑損控除は、納税者または納税者と同一生計の配偶者や親族で所得金額が48万円以下の方が所有する生活用動産に、損害が生じた場合に控除を受けられる制度です。
なお、災害や盗難、横領が原因の損害に限られ、詐欺や恐喝は適用されません。

控除額は、①または②のどちらか多い金額です。

①(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
②(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円

また、合計所得金額が1,000万円以下の場合は、「災害減免法による所得税の軽減免除」を受けられる場合があります。
雑損控除と比べて、有利なほうを選択しましょう。

税金面を考慮した一般的に「得する年収」とは

お金

税金面を考慮すると、一般的に年収600万円くらいまでが比較的公的負担などのカーブが緩やかと言えるかもしれません。
なぜなら、一定の所得を超えると税負担が増えるだけでなく、公的支援の対象から外れてしまうからです。

また、公的支援の所得制限は1,000万円前後のケースが多いため、所得が1,000万円を超えると負担の割合が増える場合もあります。

世帯構成別の注意点

ここからは、世帯構成別の注意点を解説します。
※あくまでも一般例として、参考程度に考えてください。

独身世帯の場合

独身世帯は受けられる公的支援が少ないため、年収と税額のバランスが重要です。
年収650万円前後から負担のカーブがきつくなると言われているので、前掲の「ふるさと納税」や「iDeco」など各種税金の控除制度を活用し、生活設計を構築するのも有効かもしれません。

子どもがいない共働き世帯の場合

夫婦共働きで世帯年収が600万円前後であれば、多くの場合は所得税率が5%または10%に収まります。
なお、配偶者の所得金額が103万円以下の場合は配偶者控除を利用できるため、税金を考慮すると夫婦で300万円ずつ稼ぐより片方の年収を抑えるほうがよいでしょう。

また、将来的に出産の予定がある場合は、児童手当をはじめとする公的支援の所得制限も考慮する必要があります。

夫・妻・子ども2人の4人世帯の場合

子どもがいる世帯でも、公的負担を抑えつつ控除制度や公的支援を最大に活用できる年収は600万円前後が目安と言われています。
共働きの場合は配偶者控除を利用できるよう、片方の年収を103万円以下に抑えるほうが税負担は軽減できます。

年収1,000万・2,000万・3,000万円の税金対策

右肩上がりのグラフ

税負担を軽減するには、年収にかかわらず控除制度を利用した税金対策が有効です。
年収が1,000万、2,000万、3,000万円に上ると、税金対策次第で大幅に節税できる場合があります。

ただし、納税者の所得が1,000万円を超える、またはそれ以上になると配偶者控除や児童手当など適用対象外となる制度が出てくるため、自分に適した税金対策を検討することが重要です。

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税理士だけでなく、社労士、行政書士、保険外交員が常勤しておりますので、お客様のご相談内容に応じて総合的なサポートを実現できる点が当事務所ならではの強みです。

個人から法人まで幅広いご相談に対応可能ですので、まずは些細なことでもお気軽にお問い合わせください。

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まとめ

サラリーマンが税金対策を考えるべき年収のボーダーラインは、800万円くらいではないでしょうか。
所得が上がれば税率も上がるため、税負担を軽減するには控除制度を利用しましょう。

ただし、ふるさと納税などは、それ以上寄附をしても税金の控除がされない「限度額」というものがあり、また年末までに手続きが完了しなければその年の控除の対象となりません。

iDeCoも年末までに支払ったものが対象であり、また元本割れなどのリスクもあります。
NISAは損失するリスクがあり、損をした場合には通常の上場株式のように、他の株式の売買益や配当と相殺したり損失を繰り越したりできません。

個々の状況によって最適な税金対策は異なるため、不安な場合は税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

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