【税理士が解説】喫茶店の経営が税金対策になる?かかる税金の種類・対策5つ
「税金対策で喫茶店を経営している」と聞いたことがあるものの、
・なぜ節税できるのか
・問題はないのか
と、気になる方も多いでしょう。
本記事では、税金対策で喫茶店を経営する人がいる理由を解説します。
また、喫茶店の経営にかかる税金の種類や経営者ができる税金対策も紹介するので、最適な方法を検討してみてください。
<この記事の監修者> 吉本 貴幸(よしもと たかゆき) 税理士法人吉本事務所 代表社員 税理士・行政書士 大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。 |
税金対策で喫茶店を経営する人がいる理由
喫茶店を赤字経営すれば本業の利益と相殺できるため、税金対策で喫茶店を経営する方がいます。
ただし、健全な経営とは言えないので、税負担を軽減したいなら適切な方法を知りましょう。
従来、喫茶店経営を個人で行えば、「事業所得」に該当するものと考えられてきました。
事業所得にマイナスが出れば、そのマイナスを他の事業所得や給与所得と相殺(損益通算)できます。
たとえば、給与収入があるサラリーマンが副業で喫茶店を経営してマイナスが出れば、給与所得にそのマイナスを充当することにより、給与所得の税金が還付されるというスキームです。
しかし、令和4年にこのスキームに対する課税庁の新たな通達が物議を醸しました。
「年収入300万円以下の副収入は雑所得とする」というものです。
雑所得に該当すれば、事業所得や給与所得と損益通算をすることはできません。
この通達案はパブリックコメントなどで反対が多数に上ったため、「300万円以下でも帳簿書類の保存等を要件に事業所得として扱っても可」と修正されました。
なお、税法の範囲を超えた税金対策は「脱税」に該当します。
喫茶店の経営=税金対策ではない!
先述の通り、喫茶店の経営で赤字が発生すれば本業の利益または個人の所得と相殺できる場合があるものの、赤字は損失が発生していることを意味します。
そのため、経営者である以上は目先の節税よりも事業の成長を重視すべきでしょう。
「税金対策として喫茶店を経営する」ではなく、「喫茶店の経営にかかる税負担を軽減できるように税金対策を行う」が適していると言えます。
一般的に、営利性や継続性、企画遂行性をもち、社会通念での判定により、その収入は事業所得に区分されるものです。
先述した帳簿書類を保存した場合でも、事業所得に該当しないかは以下のように個別に判断されます。(国税庁資料より)
(1) その所得の収入金額が僅少と認められる場合
たとえば、その所得の収入金額が例年300万円以下かつ、主たる収入に対する割合が10%未満の場合が該当すると考えられます。
なお、例年とは、約3年程度の期間を指します。
(2) その所得を得る活動に営利性が認められない場合
たとえば、その所得が例年赤字かつ、赤字を解消するための取り組みを実施していない場合が該当すると考えられます。
つまり、税金を減らす目的のみで常に赤字を計上している事業は、事業所得として認められないこともある点に留意しなければなりません。
喫茶店の経営にかかる税金の種類
ここからは、喫茶店の経営にかかる税金を「個人事業主」と「法人」に分けて紹介します。
個人事業主の場合
個人事業主が喫茶店を経営する場合にかかる税金は、「所得税」「住民税」「個人事業税」「消費税」の4種類です。
それぞれを詳しく解説します。
所得税
所得税とは、1月1日〜12月31日までの1年間に得た所得に課される国税です。
すべての所得から所得控除を差し引いた金額が課税の対象で、課税所得の金額に応じた税率を用いて算出します。
所得税の税率には「超過累進税率」が採用され、所得が増えるほど税率も上がる仕組みです。
なお、令和19年12月31日までの所得には、所得税と併せて「復興特別所得税」が課税されます。
個人住民税
個人住民税とは、自身が居住する地域の行政サービスを維持するために個人へ課される地方税です。
「市町村民税」と「道府県民税」に分かれ、納税者はまとめて市町村に納めます。
また、個人住民税は「所得割」と「均等割」の2種類があり、所得割は所得に応じて課税される一方、均等割は所得にかかわらず定額で課税されます。
個人事業税
個人事業税とは、個人が行う事業に課される地方税です。
一部を除いてほとんどの事業が課税対象で、税率は事業によって3〜5%と差があります。
なお、事業所得が290万円以下の場合は、課税されません。
消費税
消費税とは、商品やサービスの消費者に課される国税です。
事業者は、「売上にかかる消費税額」から「仕入れにかかる消費税額」を差し引いた金額を納めます。
なお、個人事業主の場合は、前々年の課税売上高が1,000万円以下または前年の1月1日から6月30日までの課税売上高または給与の額のいずれかが1,000万円以下であれば、納税義務が免除されます。
法人の場合
法人が喫茶店を経営する場合にかかる税金は、「法人税」「法人事業税」「法人住民税」「消費税」の4種類です。
それぞれを詳しく解説します。
法人税
法人税とは、法人が事業で得た所得に課される国税です。
益金から損金を差し引いた金額が課税の対象で、課税所得の金額に応じた税率を用いて算出します。
税率は法人の種類や規模によって差があるものの、所得税とは異なりほぼ一律です。
法人住民税
法人住民税とは、個人住民税と同じく地域の行政サービスを維持するために課される地方税です。
「市町村民税」と「道府県民税」に分かれ、事業所が位置する都道府県・市町村に納めます。
また、法人住民税は「法人税割」と「均等割」の2種類があり、法人税割は法人税の金額に応じて課税される一方、均等割は資本金や従業員の数に応じて定額で課税されます。
法人事業税
法人事業税とは、法人が行う事業に課される地方税です。
「付加価値割」「資本割」「所得割」「収入割」の4種類があり、法人の種類や規模に応じて課税されます。
なお、法人事業税は翌年の損金に算入できるという特徴をもちます。
消費税
消費税とは、商品やサービスの消費者に課される国税です。
個人・法人共通で、「売上にかかる消費税額」から「仕入れにかかる消費税額」を差し引いた金額を納めます。
なお、法人の場合は、前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下または前事業年度開始日から6か月間の課税売上高または給与の額のいずれかが1,000万円以下であれば、納税義務が免除されます。
喫茶店の経営者ができる税金対策5つ
ここからは、喫茶店の経営者ができる税金対策を5つ解説します。
1.青色申告を適用する 2.得な消費税の申告方法を把握・選択する 3.共済制度に加入する 4.経費を漏れなく計上する 5.個人の所得税を節税する |
1.青色申告を適用する
青色申告とは、確定申告での申告方法を指します。
申告方法には青色申告の他に白色申告もありますが、節税面でメリットが大きい青色申告を適用しましょう。
なお、青色申告を適用する場合は、事前に税務署へ「青色申告承認申請書」の届出が必要です。
青色申告の具体的なメリットは、以下の通りです。
青色申告特別控除を受けられる
青色申告者は、最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。
65万円の控除を受けるための要件は、以下の通りです。
・事業所得または不動産所得が生じる事業を行なっている ・所得に関する取引を複式簿記により記帳している ・申告書に貸借対照表と損益計算書を添付している ・電子帳簿保存またはe-Taxにて電子申告を行なっている |
また、65万円の控除を受けられない場合でも、55万円または10万円の控除を受けられます。
家族への給与を経費計上できる
個人事業主の場合でも、青色申告者の事業に同一生計の配偶者や親族が従事している場合は、支払った給与を経費計上できます。(青色事業専従者給与の特例)
ただし、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出したうえで、届出書通りかつ適正な範囲で支払う必要があります。
なお、青色事業専従者給与の特例を受けると配偶者控除や扶養控除の対象から外れるため、所得の状況に応じて適用を検討しましょう。
損失(赤字)を繰り越せる
喫茶店の経営で赤字が発生した場合に他の所得と相殺しきれない部分は、個人の場合で翌年から3年まで、法人の場合で最大10期まで繰り越せます。
各年の所得から控除できるほか、一定の要件を満たす場合は損失を前年の所得に繰り戻して、所得税または法人税の還付を受けることも可能です。
少額減価償却資産の特例を受けられる
少額減価償却資産の特例を受けると、資産の取得費が30万円未満の場合に一括で経費計上できます。
特例を受けるための要件は、青色申告者かつ常時使用する従業員が500人以下の中小企業であることです。
所得が増えた年に特例を受ければ、大きな節税効果が得られるでしょう。
また、資産の取得費が20万円未満であれば、「一括償却資産」としても処理できます。
一括償却資産と処理すれば、その資産の法定耐用年数にかかわらず取得価格を3年で償却(費用化)することを選択できます。
一括償却資産は償却資産税の対象外ですので、所得を圧縮する緊急性に応じて適したほうを選択するとよいでしょう。
なお、償却資産税とは、事業者が所有する土地や家屋以外の機材または設備などにかかる税金です。
課税標準額が150万円以上の場合に課税され、毎年申告と納付を行う必要があります。
2.得な消費税の申告方法を把握・選択する
消費税の計算方法は、「一般課税」と「簡易課税」の2種類があります。
一般課税 | 実際の売上に対する消費税から仕入に対する消費税を差し引いて算出する |
簡易課税 | みなし仕入率を適用して仕入に対する消費税を簡易に算出する |
簡易課税を選択すると実際の消費税額より少なくなる場合があるため、節税効果が得られます。(ケースによっては一般課税の方が少ない場合もあります)
なお、簡易課税制度の適用を受ける要件は、以下の通りです。
・個人事業主は前々年、法人は前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下である ・課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している |
※その他、一般課税を選択中に1,000万円以上の高額特定資産を購入した場合は、簡易課税が選べないこともあります。
みなし仕入率は業種によって異なり、喫茶店を含む飲食業の場合は60%と定められています。
3.共済制度に加入する
共済制度の掛金は経費または損金として経費計上できるため、もしもの備えと節税の両面で有効です。
喫茶店や飲食店を経営する場合は、「食品営業賠償共済」に加入するとよいでしょう。
食品営業賠償共済とは、提供した食品によって食中毒が起きた場合や、従業員から利用客へ感染症が移った場合などの事故を対象に保険金が支払われる制度を指します。
また、「中小企業退職金共済」や「経営セーフティ共済」などへの加入を検討するのもおすすめです。
<共済制度一覧>
公益社団法人日本食品衛生協会:食品営業賠償共済
厚生労働省ホームページ:中小企業退職金共済
中小機構ホームページ:経営セーフティ共済
4.経費を漏れなく計上する
事業に必要な費用は経費計上できるため、実際に喫茶店を経営するうえで発生する費用を把握して漏れなく計上することが重要です。
経費として認められる費用には、主に以下が挙げられます。
・租税公課 ・水道光熱費 ・旅費交通費 ・通信費 ・宣伝広告費 ・接待交際費 ・損害保険料 ・修繕費 ・消耗品費 ・減価償却費 ・福利厚生費など |
判断基準が難しい場合も多々あるため、不安な場合はプロである税理士を頼るほうが安心かつスムーズでしょう。
5.個人の所得税を節税する
個人の所得に余裕が生まれたら、所得税の節税を意識するとより税負担を軽減できます。
具体的には、家族従業員に給与を支払って所得を分散する方法が有効です。
それぞれの所得に「給与所得控除」や「基礎控除」が適用されるため、大きな節税効果を得られるでしょう。
なお、所得控除の種類は幅広く、自身の状況に応じて適用できるものもあります。
所得税の税金対策について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
所得税対策や控除・経費の活用法を徹底解説
喫茶店・飲食店の経営に関するよくある疑問
ここからは、喫茶店・飲食店の経営に関するよくある疑問を紹介します。
飲食店の税金対策は?
喫茶店以外の飲食店でも、上記のような税金対策が有効です。
飲食店の税金対策について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
飲食店の税金対策について詳しく解説
喫茶店経営の初期費用は?
喫茶店を経営するには、平均で600〜900万円程度の初期費用が必要と考えましょう。
なお、喫茶店を開業する地域や規模、仕様などによって大きく変動します。
あらかじめコンセプトや優先順位を決め、予算に合わせて準備を進めるとよいでしょう。
喫茶店を開業する流れは?
喫茶店を開業する際は、一般的に以下の流れで準備します。
1.コンセプトを決める 2.開業資金を調達する 3.必要な申請や届出を行う 4.店舗物件を契約する 5.内装や設備を揃える 6.メニュー・価格を検討する 7.販促活動や営業準備を行う |
他店を調査・分析しつつ、自店ならではの強みを考えましょう。
税金対策に関するご相談は「税理士法人吉本事務所」へ
喫茶店の税金対策は、「税理士法人吉本事務所」にお任せください!
創業当初より積み上げた実績と最新の税務知識を活かし、お客様に最適な税金対策をご提案いたします。
なお、料金のお見積り・ご相談は無料で承っております。
個人様から法人様まで総合的にサポートいたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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まとめ
喫茶店を赤字経営すれば本業の利益と相殺できることから、税金対策で喫茶店を経営する人がいます。
しかし、健全な経営とは言えないため、税負担を軽減したいなら適切かつ有効な方法を選択しましょう。
税金対策に対して的確なアドバイスを受けたい場合は、プロである税理士に相談してみるのも1つの方法です。