【税理士監修】飲食店の税金対策をわかりやすく解説!税金の種類や経費の一覧も
飲食店の経営でより多くの利益を得るためには、税金対策を意識すべきです。
余計な税金を支払わずに済み、結果として手元にお金が残ります。
本記事では、飲食店経営者が取り組むべき税金対策を6つ解説します。
また、飲食店の経営にかかる税金の種類や経費を一覧で解説するので、ぜひ役立ててください。
<この記事の監修者> 吉本 貴幸(よしもと たかゆき) 税理士法人吉本事務所 代表社員 税理士・行政書士 大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。 |
飲食店経営者が取り組むべき税金対策6つ
まずは、飲食店経営者が取り組むべき税金対策を6つ解説します。
1.青色申告を選択する 2.共済制度に加入する 3.経費を正確に計上する 4.所得を分散する 5.法人化を検討する 6.得な消費税の申告方法を把握・選択する |
1.青色申告を選択する
青色申告とは、不動産所得、事業所得、山林所得を得ている人が適用できる確定申告での申告方法を指します。
白色申告よりも節税面で大きなメリットが得られるため、税金対策の基本です。
青色申告のメリットは、主に以下が挙げられます。
青色申告特別控除を適用できる
青色申告者は、以下の要件を満たすと「青色申告特別控除」により55万円の控除を受けられます。
・事業所得または不動産所得が生じる事業を行なっている ・所得に関する取引を複式簿記により記帳している ・申告書に貸借対照表と損益計算書を添付している |
加えて、電子帳簿保存またはe-Taxにて電子申告を行なっている場合は、65万円の控除対象です。
なお、上記の要件を満たさない場合は、10万円の控除が適用されます。
家族従業員への給与が経費計上できる
個人事業主の場合は、原則として家族従業員への給与を経費計上できませんが、青色申告者であれば「青色事業専従者給与の特例」により経費計上が認められています。
ただし、以下の要件を満たす必要があります。
・青色事業専従者に支払われた給与である ・青色事業専従者給与に関する届出書を提出している ・届出書の通りかつ適正な範囲で支払われている ・労務の対価として相当と認められる金額である |
なお、青色事業専従者給与の特例を受けると、配偶者控除や扶養控除の対象から外れます。
所得の状況に応じて、適用を検討するとよいでしょう。
損失(赤字)を繰り越せる
飲食店の経営で発生した赤字が他の所得と相殺しきれない場合は、個人で翌年から3年まで、法人で最大10年まで繰り越せるのも青色申告のメリットです。
また、個人も法人も一定の要件を満たせば、損失を前年の所得に繰り戻して所得税または法人税の還付を受けられます。
少額減価償却資産の特例を受けられる
青色申告者は、以下の要件を満たすと「少額減価償却資産の特例」により取得費の全額を経費計上できます。
・資産の取得費が30万円未満である ・常時使用する従業員が500人以下の中小企業である |
所得が増えた年に特例を受ければ課税所得を抑えられるため、飲食店の税金対策として有効です。
ただし、年度内の取得費が300万円を超えた部分には適用できない点に注意しましょう。
また、資産の取得費が20万円未満の場合は、「一括償却資産」として処理することも可能です。
少額減価償却資産は償却資産税の対象である一方、一括償却資産は対象外のため、所得を圧縮する緊急性が低ければ一括償却資産を選択してもよいかもしれません。
償却資産税は、事業者が所有する土地や家屋以外の機材または設備などに対して課税され、毎年の申告と納付が必要な税金です。
課税標準額が150万円以上の場合に課税されます。
なお、改正により令和4年4月以降は、上記の「少額減価償却資産の特例」や「一括償却資産」または「10万円未満の資産」のうち、貸付(主要な事業として行われる場合を除く)の用に供されるものは全額経費にできなくなり、耐用年数で償却することとなりました。
少額のドローンやLED照明を大量に取得し、全額経費にしたうえで貸付けるという節税スキームが問題視されたためです。
2.共済制度に加入する
共済制度に加入すると掛金の全額を経費計上できるため、もしもに備えつつ節税できます。
飲食店の経営者におすすめの共済制度は、以下の3つです。
食品営業賠償共済
食品営業賠償共済とは、飲食店で起こりうる事故が対象の共済制度です。
被害者への損害賠償金をはじめ、応急手当や護送、緊急措置に要した費用、賠償問題が生じた場合の訴訟・弁護士費用などが支払われます。
掛金は業種や口数によって差があるため、詳細は公式サイトで確認するとよいでしょう。
公益社団法人日本食品衛生協会:食品営業賠償共済
小規模企業共済
小規模企業共済とは、個人事業主や中小企業の経営者・役員が対象の退職金制度です。
掛金は1,000〜7万円の範囲で自由に設定できるほか、受け取り方法も一括、分割、一括と分割の併用から選べます。
また、掛金の納付期間に応じた範囲内であれば低利率で借入れができる「貸付制度」を利用できるのもメリットです。
ただし、加入資格として業種や従業員数に関する要件が設けられています。
中小機構ホームページ:小規模企業共済
経営セーフティ共済
経営セーフティ共済とは、取引先の倒産に備えるための共済制度です。
掛金は掛金総額が800万円に達するまで、5,000〜20万円の範囲で自由に設定できます。
取引先の倒産により売掛金の回収が困難になった場合はすぐに、「回収困難となった売掛金債権等の額」または「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」のいずれか少ないほうの金額まで借入れが可能です。
なお、1年以上継続して事業を行なっている中小企業が加入の対象で、他にも業種や従業員数、資本金など一定の要件が設けられています。
中小機構ホームページ:経営セーフティ共済
3.経費を正確に計上する
たとえ少額の費用でも正確に計上することで節税につながるため、まずは経費にできる費用を知ることも重要です。
ただし、常識的な範囲を超える部分は経費として認められない点に注意しましょう。
また、判断基準が難しい場合もあるため、漏れなく計上するには税理士を頼るほうが正確かつスムーズです。
飲食店にかかる経費は、後ほど一覧で紹介します。
4.所得を分散する
所得税は所得が多いほど税額も高くなる仕組みのため、分散することで節税効果が得られます。
具体的には家族従業員に給与を支払うことで、それぞれに所得控除が適用されるためです。
ただし、その個人事業者が社会保険適用事業者であれば同時に社会保険料の支払いが発生するため、どれだけの節税効果が得られるかを踏まえて検討する必要があります。
なお、労働の実態が伴っていなければ認められないため、実務に合わせて妥当な金額を設定することが重要です。
5.法人化を検討する
個人事業主として飲食店を経営している場合は、法人化することで節税できる可能性があります。
法人化のメリットは、主に以下の通りです。
・税率がほぼ一定になる ・経費の範囲が広くなる ・消費税の免税期間が延びる ・損失を10年まで繰り越せる |
課税対象所得が800~900万円以上であれば、法人化したほうが節税面で有利になる場合が多いと言えます。
とはいえ、個々の状況によって目安は異なるため、まずは税理士に相談するとよいでしょう。
6.得な消費税の申告方法を把握・選択する
消費税の計算方法は「一般課税」と「簡易課税」に分かれ、どちらを選択するかにより大きく税額が変わる場合があります。
なぜなら、簡易課税ではみなし仕入率を適用して簡易に算出できるため、実際の消費税額より少なくなる場合があるからです。(逆に多くなる場合もあります)
一方、一般課税は「売上先から預かった消費税」から「仕入先等に支払った消費税」を引いた差額が国への納付税額となります。
そのため、たとえば高額の設備投資などで支払った消費税が売上の消費税より大きい場合は、消費税が還付されます。
この還付請求は簡易課税ではできないため、注意しましょう。
また、令和5年10月から始まるインボイス制度では、一般課税の場合は仕入にかかるインボイスの資料が必要となるものの、簡易課税の場合はみなし仕入率を利用するので不要です。
消費税の申告と計算の手間を軽減できるという観点では、さらに簡易課税が優位性をもつでしょう。
一般的に税理士が関与する場合は、税理士がクライアントである事業者が一般課税と簡易課税のどちらが有利かを毎年判定します。
なお、簡易課税制度を選択するには、以下の要件を満たす必要があります。
・個人事業主は前々年、法人は前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下である ・課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している |
みなし仕入率は業種によって異なり、飲食業の場合は60%です。
なお、簡易課税を選択した際は、2年間継続しなければなりません。
また、近年の税制改正により、簡易課税を含めて消費税法が複雑に改編されています。
上記要件を満たしても、簡易課税を選択できないケースがあります。(一般課税のときに1,000万円以上の高額特定資産を取得した場合など)
そして、インボイス制度が始まれば、従来免税事業者である方がインボイス登録をした場合に、売上にかかる消費税の2割を納付するいわゆる「2割特例」の選択も可能です。
たとえば、本体100円+消費税10円でものを売った場合、10円×2割=2円を国に納付します。
①一般課税②簡易課税③2割特例と、場合により3通りの納税方法を選択できるため、不明なことがあれば税理士や税務署に聞くとよいでしょう。
飲食店の経営にかかる税金の種類
ここからは、飲食店の経営にかかる税金の種類を個人事業主と法人に分けて解説します。
個人事業主の場合
個人事業主が飲食店を経営する場合にかかる税金は、「所得税」「個人住民税」「個人事業税」「消費税」の4種類です。
所得税
所得税は、個人が1月1日〜12月31日までの1年間で得た所得に対して課税される税金のことです。
所得の合計金額から各種所得控除を差し引いた残りの部分(課税所得)に課税され、金額に応じて5〜45%の税率が適用されます。
また、所得税は所得が上がれば税率も高くなることが特徴で、税負担を軽減するには課税所得を小さくすることが重要です。
個人住民税
個人住民税は、各行政サービスの維持に必要な費用を住民が分担するために課税される税金です。
「所得割」と「均等割」の合計金額をまとめて市町村に支払います。
所得割は個人の所得に応じて、均等割は定額で課税されます。
個人事業税
個人事業税は、個人が行う事業に対して課税される税金です。
課税対象の業種は法律によって定められており、該当しない場合は課税されません。
なお、個人事業税の税率は3~5%まで、3段階に区分されています。
消費税
消費税は、商品やサービスの対価に対して課税される税金です。
前々年の課税売上高が1,000万円を超える事業者が対象で、売上にかかる消費税額から仕入れにかかる消費税額を差し引いた残りの部分を納めます。
また、特定期間として前年の1月1日から6月30日までの課税売上高または給与の額のいずれかが1,000万円を超えた場合も、納税義務が生じます。
法人の場合
法人が飲食店を経営する場合にかかる税金は、「法人税」「法人住民税」「法人事業税」「消費税」の4種類です。
法人税
法人税は、法人が事業で得た所得に対して課税される税金のことです。
益金から損金を差し引いた残りの部分に課税され、法人の種類や規模に応じて15〜23.4%の税率が適用されます。
所得税とは異なり税率の変動が小さいため、先述の通り法人化したほうが節税面で有利になる場合があります。
法人住民税
法人住民税は、各行政サービスの維持に必要な費用を法人も負担するために課税される税金です。
法人住民税の場合は、「法人税割」と「均等割」の2種類に分かれます。
法人税割は法人税の金額に応じて、均等割は資本金や従業員数に応じて定額で課税されます。
法人事業税
法人事業税は、法人が行う事業に対して課税される税金です。
法人の種類や規模に応じて、「付加価値割」「資本割」「所得割」「収入割」が課税されます。
名前は法人住民税と似ていますが、課税対象や納税先、分割基準が異なります。
消費税
消費税は、商品やサービスの消費に対して課税される税金です。
前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超える事業者が対象で、売上にかかる消費税額から仕入れにかかる消費税額を差し引いた残りの部分を納めます。
なお、原則として前事業年度開始日から6か月間の課税売上高または給与の額のいずれかが1,000万円を超えた場合も、納税義務が生じることを覚えておきましょう。
【経費一覧】飲食店の経費はどこまで?
飲食店の経費として認められる費用は、主に以下が挙げられます。
・租税公課(納付した消費税や個人事業税、事業にかかる固定資産税など) ・水道光熱費 ・旅費交通費 ・通信費 ・宣伝広告費 ・接待交際費 ・損害保険料 ・修繕費 ・消耗品費 ・減価償却費(配達用の車や店舗の内装工事、調理器具、看板など) ・福利厚生費 ・給料賃金 ・利子割引料 ・地代家賃 ・貸倒金 ・サービス費 ・衛生管理費 ・組合費や諸会費 ・クレジットカードや電子マネーの手数料など |
一般的に、飲食店を経営するうえで必要な費用が経費に該当すると覚えておきましょう。
先述の通り、税負担を軽減するには少額の費用でも正確に計上することが重要です。
また、事業主が自分の店舗で飲食したり従業員にまかないを出したりする場合、売上として計上しなければならず、所得税や消費税の対象となります。
従業員のまかないは、従業員から一部負担金を徴収するかどうかにより税金の処理も異なります。
給与とみなされる場合は源泉徴収の必要性も生じるため、詳しくは税理士や税務署に相談しましょう。
飲食店の税金対策に関するよくある質問
ここからは、飲食店の税金対策に関するよくある質問に対して解説します。
飲食店の経営に税理士はいらない?
飲食店を経営するなら、税理士のサポートが必要です。
できるだけ費用を抑えたいと考えるかもしれませんが、飲食店を経営しながら経理業務を同時に行うことは簡単ではありません。
また、プロの視点で経営や節税に関するアドバイスを受けられるのも大きなメリットです。
予算を考慮しつつ、安心して任せられる税理士を探しましょう。
わざと赤字にする理由は?
所得税や法人税は所得に応じて課税されるため、赤字の場合は税負担が軽減されるためです。
また、赤字を繰り越せば、翌年以降の黒字に転じた年度の所得と相殺できます。
とはいえ、本来は赤字が続かないよう経営の見直しが必要です。
節税するなら、上記の税金対策を検討すべきでしょう。
新しい店を出すと税金対策になる?
開店直後は赤字になる場合が多いものの、既存店の利益と相殺すれば税負担を軽減できます。
ただし、継続的な対策ではないことを理解しておきましょう。
また、適した税金対策は状況によって異なるため、税理士に相談してみるのも1つの方法です。
飲食店の税金対策は「税理士法人吉本事務所」へ
飲食店の税金対策は、「税理士法人吉本事務所」にご相談ください!
お客様一人ひとりのお悩みやご要望に応じて、最適な税金対策をご提案いたします。
また、当事務所には税理士だけでなく、社労士、行政書士、保険外交員が在籍しており、時間的・費用的負担を軽減しつつ幅広いご相談に対応可能です。
料金のお見積り・ご相談は無料で承っておりますので、些細なことでもお気軽にお聞かせください。
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まとめ
税金対策を積極的に取り組むことで、より多くの利益を得られます。
ただし、同じ飲食店でも状況によって適した税金対策は異なるため、税理士への相談も視野に入れて検討するとよいでしょう。
安心して任せられるかどうか、まずは無料相談を利用して判断してみるのもおすすめです。