【税理士監修】相続税対策に有効な法人化のメリット・デメリットから注意点まで徹底解説
相続税は税率が最高55%と負担が重い税金として知られていますが、法人化によって大きな節税効果を得られる場合があります。
とはいえ、法人化のメリット・デメリットも踏まえて、慎重に検討することが大切です。
本記事では、法人化により相続税対策ができる仕組みからメリット・デメリットまで、詳しく解説します。
法人化を検討する際の注意点も併せて解説するので、ぜひ参考にしてください。
<この記事の監修者> 吉本 貴幸(よしもと たかゆき) 税理士法人吉本事務所 代表社員 税理士・行政書士 大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。 |
法人化により相続税対策ができる仕組み
相続税は個人が所有する財産に対して課税され、法人が所有する財産は相続税の対象にはなりません。
そのため、個人事業を法人化して財産を移転すれば、個人の財産が減り大きな節税効果を得られる場合があります。
なお、相続税は基礎控除額を上回る場合のみ課税されるため、下記の計算式で算出される基礎控除額以下に抑えられれば非課税です。
▼基礎控除額の計算式
3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
また、家族に役員報酬を支給することで、贈与税の節税も実現できます。
贈与税は、個人から贈与を受けた財産(1年間で110万円を超える場合)に課税されるので、役員報酬として財産を移転すれば贈与税の対象にならないためです。
(※ただし、役員としての勤務実態がなかったり明らかな節税目的と判断されたりすれば、役員報酬が認められない場合もあります)
相続税は相続した財産額が大きければ税率は最高55%に上り、想定以上に多額の税金が発生したケースも見受けられます。
事前の対策で納税額が大きく変わる場合もあるため、相続税対策は少しでも早く検討することが重要です。
会社設立は不動産所有者の節税対策にも有効!
個人で不動産賃貸業を営む場合は、法人として不動産を所有することで家賃収入が会社の利益となりさらに個人の資産を減らせます。
また、先述の通り家族に役員報酬を支給することで、相続税と贈与税ともに節税が可能です。
ただし、不動産を所有する本人ではなく、相続人を株主にする必要があります。
本人を株主にしてしまうと、会社の株式が相続の対象となるためです。
最も節税効果の高い設立方式は?
不動産の資産管理会社は「不動産所有方式」「管理委託方式」「一括転貸方式」の3通りに分かれます。
このうち、最も節税効果が高いと言える方式は「不動産所有方式」です。
ただし、移転に際して税金や手続きが生じるほか、不動産をどのように会社へ移転させるかを慎重に検討する必要があるため、まずは税理士に相談することをおすすめします。
相続税対策×法人化のメリット
ここからは、法人化による3つのメリットを解説します。
所得税の節税にもつながる
個人事業を法人化することで、相続税や贈与税に加えて所得税の節税も実現できます。
所得税の税率は所得が増えれば最高45%まで上がりますが、法人税の税率は最高23.2%と低いためです。
個人での所得が800万円を超える場合は法人化によって節税できる場合があるため、税理士と自社の状況を踏まえて相談するとよいでしょう。
また、法人化により会社から給与を受け取ることで「給与所得控除」が適用され、より節税効果を高められます。
経費の範囲が広くなる
法人化によって経費の範囲が広くなるため、役員報酬や賞与、退職金なども計上できます。
また、個人の生命保険料控除は上限が12万円と定められていますが、法人は保険料の全額を計上できる場合があるのもメリットです。
なお、経費を漏れなく計上することは節税対策の基本と言えるため、留意しておきましょう。
赤字の繰越期間が長くなる
青色申告を行う法人は、赤字が発生した場合に最大10年まで繰り越せるのも法人化のメリットです。
翌年以降の所得と相殺(損益通算)することにより、大きな節税効果を得られる場合があります。
なお、赤字を繰り越す際は、資金繰りを考慮して段階的に相殺するのが望ましいでしょう。
また、一定の要件を満たす場合に限り、損失を前年の所得に繰り戻して法人税の還付を請求できます。
相続税対策×法人化のデメリット
この章では、法人化による3つのデメリットを解説します。
メリットとデメリットを踏まえて、慎重に検討しましょう。
設立費用や手間がかかる
株式会社を設立する場合は、20万円以上の費用や各種手続きを行う手間がかかります。
また、資本金が1,000万円以下であれば設立から2年間は消費税が免除されますが、資本金が1,000万円以上の法人は初年度から納税しなければならない点には注意しましょう。
赤字でも税金が課される
法人に課税される法人住民税の均等割は、赤字でも納税義務は免れません。
法人税、法人住民税の法人税割、法人事業税は免除されますが、赤字でも課される税金がある点はデメリットと言えるでしょう。
会計処理が複雑になる
法人は個人とは異なり、会計処理が複雑になることもデメリットです。
自分で対応できない場合は、経費担当者を雇用したり税理士に依頼したりする必要があるため、その分費用が発生します。
相続税対策で法人化を検討する際の注意点
最後に、相続税対策で法人化を検討する際の注意点を解説します。
節税効果はケースごとに異なる
個人事業の法人化は相続税対策として有効とはいえ、節税効果はケースごとに異なります。
すべてのケースで法人化による節税が好ましいとは言えないため、個人の状況に応じて法人化すべきかどうかの判断が必要です。
相続税対策は早めに取り組む
相続税の税率は最高55%に上り、重い負担が課される場合もあります。
後回しにすると何もできないまま相続が発生してしまう恐れもあるため、相続が発生する前の対策が重要です。
信頼できる税理士に相談する
相続税対策は、法人化を含め税理士へ相談しながら慎重に検討しましょう。
税理士事務所ごとに得意・不得意があるため、相続税対策に強く信頼できる税理士事務所を探し、最適な方法を選択してください。
相続税対策のご相談は「税理士法人吉本事務所」へ
相続税対策なら、税理士法人吉本事務所にお任せください!
「どれくらいの相続税がかかるのか」「どのような対策を検討すべきか」など、現状やご要望をお聞きしつつ最適なご提案をお約束いたします。
相続税は事前の対策で納税額が左右され、財産を相続する方が「何か対策をしておくべきだった」と後悔されるケースも少なくありません。
相続税に関するご不安や疑問点にも丁寧にお答えいたしますので、相続税に関するお悩みはぜひ一度税理士法人吉本事務所までご相談ください。
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まとめ
相続税は個人が所有する財産に対して課税されるため、個人事業を法人化して財産を移転すれば、大きな節税効果を得られる場合があります。
とはいえ、節税効果はケースごとに異なるので、最適な方法を慎重に検討しましょう。
相続税対策は早めに取り組むことで、より節税効果を高められる場合があります。
どのように進めればよいかわからない場合も、まずは税理士へ相談してみるとよいでしょう。