【税理士監修】相続税の申告期限は?過ぎた場合のペナルティや納付までの流れをすべて解説!
相続税の申告期限を過ぎると、通常であれば納める必要のない税金が生じてしまい、相続人が損をする恐れがあります。
なお、相続税の負担を軽減する特例や控除の適用は期限内の申告が前提のため、先送りにせず早く行動することが重要です。
本記事では、相続税の申告・納付期限や申告期限を過ぎた場合のペナルティを詳しく解説します。
また、申告期限ギリギリまたは間に合いそうにない場合の対処法も併せて紹介するので、相続税の申告を初めて行う方はぜひ最後までご覧ください。
<この記事の監修者> 吉本 貴幸(よしもと たかゆき) 税理士法人吉本事務所 代表社員 税理士・行政書士 大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。 |
相続税の申告期限は【10か月以内】
相続税の申告期限は、死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
死亡したことを知った日とは、通常であれば死亡した日を指します。
たとえば、令和6年2月1日に亡くなった場合は、令和6年12月1日が相続税の申告期限です。
ただし、期限となる日が土曜日、日曜日、祝日に当たる場合は翌日に設定されることから、正確には令和6年12月2日が申告期限となります。
もし申告期限を過ぎると、ペナルティが課される場合もある点には注意が必要です。
詳しくは、後ほど解説します。
相続税の納付期限と納付方法
相続税の納付期限は、申告期限と同じで死亡したことを知った日(死亡した日)の翌日から10か月以内です。
要するに、死亡した日の翌日から10か月以内に申告と納付を行う必要があります。
たとえ期限内に申告を行なったとしても、納付が遅れるとペナルティが課される点に留意しておきましょう。
相続税の納付方法は、主に以下が挙げられます。
・税務署・金融機関・コンビニの窓口 ・インターネット ・クレジットカード |
なお、原則は現金一括で納付しますが、難しい場合は「延納」や「物納」と呼ぶ制度があります。
延納 | 納付が困難な金額の範囲内で分割納付(年払い)が認められる制度 |
物納 | 納付が困難な金額の範囲内で相続財産での納付が認められる制度 |
いずれの制度も一定の要件があるため、詳細は国税庁のホームページで確認しましょう。
国税庁:No.4211 相続税の延納/No.4214 相続税の物納
相続税の申告が不要なケース
相続財産の合計額が基礎控除額を超えない場合は、相続税の申告は不要です。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数 |
相続税は、基礎控除額を超える場合のみかかる税金で、必ずしもかかるわけではありません。
申告期限の10か月を過ぎるとどうなるの?
相続税の申告期限を過ぎると、以下のような事態が起こり得ます。
・延滞税・無申告加算税がかかる ・各種特例・控除が適用できなくなる ・他の相続人に連帯納付の義務が生じる ・財産を差し押さえられる可能性がある |
順に解説します。
延滞税・無申告加算税がかかる
相続税の納付が遅れた場合は、ペナルティとして期限となる日の翌日から延滞税がかかります。
また、申告・納付ともに遅れた場合は、延滞税と無申告加算税の両方の対象となるでしょう。
延滞税は納付が遅れるほど負担が増え、無申告加算税は相続税額に応じた割合で計算されます。
延滞税や無申告加算税は相続税と二重にかかるため、通常であれば納める必要のない税金が生じることになります。
各種特例・控除が適用できなくなる
相続税には、負担を軽減するための特例や控除が複数設けられています。
ただし、期限内に申告を行わなければ、適用できないものもある点に注意しましょう。
相続税は特例や控除の適用によって大幅に税額を下げられる場合もあるため、税負担を最小限に抑えるためにも期限内の申告・納付が必要です。
他の相続人に連帯納付の義務が生じる
相続税には連帯納付義務があり、相続人がお互いに連帯して納付しなければなりません。
もし期限内に申告・納付を行わなかった場合は、まず本来の納税者である相続人に対して督促状が発行されますが、それでも納付されなかった場合は、他の相続人(連帯納付義務者)に納付されていない旨のお知らせや状況に応じて督促状が送付されます。
自分が納付しなかった場合は他の相続人へ、他の相続人が納付しなかった場合は自分へ、納付義務が生じる点に注意しましょう。
財産を差し押さえられる可能性がある
先述の通り相続税には連帯納付義務があるため、本来の納税者である相続人が納付しなかった場合は、最終的に他の相続人(連帯納付義務者)のもとへ督促状が送付されます。
とはいえ、他の相続人が納付を拒否すると、本来の納税者が保有する財産を差し押さえられる可能性がある点にも留意しなければなりません。
なお、本来の納税者に差し押さえられる財産がなければ、他の相続人の財産が差し押さえられる場合もあります。
相続発生から相続税の申告・納付までの流れ
相続発生から相続税の申告・納付までの流れは、以下の通りです。
申告期限を過ぎてしまわないよう、ここで確認しておきましょう。
1.法定相続人を確認する | 被相続人(亡くなった人)が出生してから死亡するまでの戸籍謄本で法定相続人(被相続人の財産を引き継ぐ権利がある人)を確認する |
2.遺言書の有無を確認する | 遺言書があれば、開封せずに家庭裁判所で検認(遺言書の偽造・変造を防止するための手続き)を受ける ※公正証書遺言または法務局で保管された自筆証書遺言を除く |
3.相続財産を確認する | 相続の対象となるプラスの財産とマイナスの財産を調べる |
4.相続財産を評価する | 相続税の対象となる財産の評価を行い、価値を明らかにする |
5.遺産分割協議を行う | 遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書(合意した内容をまとめた書面)を作成する |
6.相続税の申告・納付を行う | 死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納付を行う |
もし申告期限までに遺産分割協議がまとまらなかった場合は、法定相続分(法律で定められた相続の割合)の相続財産を取得したものとして申告・納付を行います。
相続税申告を初めて行う方は、以下の記事を参考にしてください。
税理士が相続税申告のポイントを丸ごと解説
申告期限ギリギリor間に合いそうにない場合
この章では、相続税の申告期限ギリギリまたは間に合いそうにない場合の対処法を解説します。
相続に強い税理士へ相談する
相続税の申告期限が迫っているなら、相続税を専門に扱う税理士を探し、まずは相談してみることをおすすめします。
申告期限を過ぎてからでは遅いため、先送りにせず早く行動することが重要です。
相続に強い税理士の探し方は、以下の記事を参考にしてください。
相続税に強い税理士を見極める4つのポイントを解説
概算の税額で申告・納付する
申告期限が過ぎた場合のペナルティを回避するために、税額を概算して多めに申告・納付する方法も一つです。
申告後に正確な税額に訂正する更正の請求を行えば、差額の還付を受けられます。
ただし、相続税の負担を軽減する特例や控除は、期限内の申告で適用しなければ認めてもらえないものもある点に注意してください。
相続にかかわるその他手続きの期限にも注意!
以下のような手続きが必要な場合は、それぞれの期限に注意しましょう。
・準確定申告の期限 ・相続放棄・限定承認の期限 |
順に解説します。
準確定申告の期限
準確定申告とは、被相続人の代わりに相続人が行う確定申告のことです。
申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内と定められています。
確定申告の対象者が亡くなった場合は、1月1日から死亡した日までの所得に応じて所得税の申告・納付を行いましょう。
相続放棄・限定承認の期限
相続の方法は、相続財産をすべて受け継ぐ単純承認以外に、相続放棄と限定承認があります。
相続放棄や限定承認を検討している場合は、相続の開始を知った日から3か月以内に手続きが必要です。
なお、相続放棄はすべての相続財産を受け継がずに放棄することで、限定承認はプラスの財産の範囲でマイナスの財産を受け継ぐことを意味します。
税理士に依頼する場合は6か月以内が目安
相続税の申告を税理士に依頼する場合は、被相続人(亡くなった人)の死亡から6か月以内を目安にしましょう。
申告期限が迫っている状態で依頼すると、税理士報酬が高くなる場合もあるためです。
相続税申告を税理士に依頼するメリットは、以下の記事を参考にしてください。
相続税申告を税理士に依頼すべき理由や相続税に強い税理士の探し方を解説
【Q&A】相続税申告に関するよくある質問
最後に、相続税の申告に関するよくある質問を紹介します。
相続税の申告期限は延長できる?
原則、相続税の申告期限は延長できません。
ただし、以下のような場合は、例外として延長が認められる可能性があります。
・遺留分侵害額請求があった場合 ・相続人である胎児が生まれた場合 など |
相続税申告は自分でできる?
相続税申告は自分でもできますが、全体のうち85.9%の人が税理士を通して申告しています(令和4事務年度国税庁実績評価書)。
相続税申告には専門知識が求められるため、税負担を最小限に抑えたいなら税理士に依頼するのがおすすめです。
相続税の申告を初めて行う方は、以下の記事を参考にしてください。
税理士が相続税申告の基本をすべて解説
また、相続税に強い税理士の探し方は、以下の記事で解説しています。
相続税に強い税理士を見極める4つのポイントを解説
相続税申告に必要な書類は?
相続税申告に必要な書類は相続財産や申告内容によって異なりますが、すべてのケースで提出しなければならないものは主に以下が挙げられます。
・被相続人の戸籍謄本 ・被相続人の住民票の除票 ・相続人全員の住民票 ・相続人全員の本人確認書類の写し ・遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し など |
多くの書類が必要なケースもあるため、税理士に確認してみましょう。
ケース別の必要書類は、以下の記事を参考にしてください。
相続税申告の必要書類を税理士が一覧で解説
相続税申告のご相談は税理士法人吉本事務所へ
相続税の申告に関するご相談は、税理士法人吉本事務所へお問い合わせください!
当事務所の相続専門税理士がお客様のご状況を細かくお伺いし、申告・納付まで総合的にサポートいたします。
相続税の負担を軽減するには財産の評価をはじめ、特例や控除の適用判断、次の相続を踏まえた遺産の分け方など、専門知識やノウハウが必要で、たとえ税理士でも専門性が低ければ正確な申告は難しいのが現実です。
なかには想定以上の相続税がかかるケースもあるので、まずは当事務所の相続チームへお気軽にご相談ください。
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まとめ
相続税の申告期限は、死亡したことを知った日(死亡した日)の翌日から10か月以内です。
申告期限の10か月を過ぎると、以下のような事態が起こり得るため、後悔しないよう早く行動しましょう。
・延滞税・無申告加算税がかかる ・各種特例・控除が適用できなくなる ・他の相続人に連帯納付の義務が生じる ・財産を差し押さえられる可能性がある |
なお、相続税の申告を税理士に依頼する場合は、被相続人(亡くなった人)の死亡から6か月以内を目安にするのがおすすめです。
申告期限ギリギリまたは間に合いそうにない場合も、まずは税理士に相談してみましょう。