【税理士監修】相続税の還付とは?払いすぎてしまう原因や手続きのリスク、還付請求の流れを解説!
相続税を払いすぎていた場合、適切に手続きを行えば還付されるケースがあります。
すでに納めたものの「本当はもっと税額を抑えられたのではないか」と納得できていない方も、多いのではないでしょうか。
本記事では、相続税を払いすぎてしまう原因や還付請求の手続きを詳しく解説します。
被相続人が死亡した日の翌日から5年10か月以内であれば手続きを行えるため、まずは税理士に相談しましょう。
<この記事の監修者> 吉本 貴幸(よしもと たかゆき) 税理士法人吉本事務所 代表社員 税理士・行政書士 大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。 |
相続税の還付とは
相続税の還付とは、以前の申告で払いすぎた分を返してもらうことを指します。
税務署に対して「更正の請求」という手続きを行い、認められれば払いすぎた分が還付される仕組みです。
相続税を払いすぎたかもしれない場合は、申告内容を見直すことで過払い分を取り戻せる場合があります。
相続税の還付請求は「5年以内」が期限!
相続税の還付請求(更正の請求)は、相続税の申告期限から5年以内が期限です。
被相続人が死亡した日の翌日から5年10か月以内であれば、払いすぎていた場合に手続きが行えます。
期限を過ぎてしまうと、たとえ払いすぎていたとしても原則として還付請求は行えない点に注意しましょう。
相続税を払いすぎてしまう原因って?
相続税を払いすぎてしまう原因として、以下の3つが考えられます。
・土地の評価には専門的な知識がいる ・依頼した税理士が相続に詳しくない ・払いすぎていても知らせてくれない |
順に解説します。
土地の評価には専門的な知識がいる
土地を相続した場合は、相続税を計算する過程で評価(価値を判定すること)を行います。
評価方法は共通して定められているものの、相続税を抑えるには評価額を下げられるポイントを見落とさず適正に評価するための知識が必要です。
評価を行う税理士によって納税額が増減するため、土地を相続しているケースでは相続税が還付される事例が多い傾向にあります。
依頼した税理士が相続に詳しくない
土地の評価を含め相続税は専門性が高い分野のため、経験が浅い税理士に依頼したことで相続税を払いすぎてしまうケースも珍しくありません。
税理士は医者と同じように一人ひとり専門分野が異なり、税理士全員が相続に詳しいわけではないためです。
相続税には税額を抑えるための特例が複数設けられていますが、税理士が不慣れで活用しきれていない場合も多々あります。
払いすぎていても知らせてくれない
納税額の不足が疑われる場合には税務調査の対象になりますが、相続税を払いすぎている場合に税務署が知らせてくれることはありません。
基本的に申告内容は正しいものとして扱われるため、自身で気付かなければ返ってくることはないのです。
ただし、先述の通り還付請求(更正の請求)の期限を過ぎてしまうと、たとえ払いすぎていても取り戻せないため、財産は自分自身で守る必要があります。
【注意】相続税の還付請求にはリスクも
相続税の還付請求は、払いすぎた分を返してもらえる可能性がある一方、リスクを踏まえたうえで手続きを行うことが重要です。
理由として、納税者が申告のミスに気付いた場合は、税理士でなくともわかるミスがある申告ということを意味します。
要するに他にもミスがある恐れ(申告していない財産がある等)が高く、還付請求により税務調査を誘発してしまう可能性が考えられるためです。
税務署に指摘されると、目論んでいた還付金を上回る追徴金が課せられるかもしれません。
また、過大な還付金の象徴であった「広大地評価規程」が「地積規模の大きな宅地の評価規程」に変更されたことも理由の一つです。
以前は「広大地評価規程」が適用されれば大幅な減額が可能でしたが、現在は不可となりました。
相続人・財産債務が少なく、相続財産のうち土地が多くの割合を占め、その土地の評価が大きく・明らかに間違っている場合や、単純に障害者控除を適用していない場合などは還付請求を検討するとよいでしょう。
相続税の還付請求を行う手続きの流れ
相続税の還付請求(更正の請求)は、以下の流れで手続きを行います。
1.以前の申告で提出した書類を見直す | 税理士に相談し、申告内容や提出書類を確認してもらいます。 必要に応じた調査を行い、払いすぎていたことが判明すれば手続きの準備に移ります。 |
2.税務署へ更正の請求書を提出する | 更正の請求書と内容を証明する書類を揃えて、税務署へ提出します。 必要書類の詳細は、次章で解説します。 |
3.税務署から更正通知書が送付される | 請求書の提出から3か月前後で、結果が記載された更正通知書が届きます。 |
4.税務署から国税還付金振込通知書が送付される | 相続税の還付が認められれば、返金される金額が記載された国税還付金振込通知書が届きます。 |
5.口座に相続税の還付金が振り込まれる | 国税還付金振込通知書が届いてから2週間前後で、相続税の還付金が指定の口座に振り込まれます。 税理士に報酬を支払い、手続きは完了です。 |
詳しくは、国税庁のホームページでも確認できます。
国税庁:相続税及び贈与税の更正の請求手続
還付請求の必要書類
相続税の還付請求の必要書類は、主に以下が挙げられます。
・相続税の更正の請求書 ・申告又は通知に係る税額及び更正の請求による課税標準等又は税額等 ・更正の請求に至った経緯を証明する書類 ・修正申告書 ・本人確認書類 ・土地の正しい評価額・計算の根拠を示す書類 ・提出した相続税申告書の控え など |
実際にどの書類が必要かは、担当の税理士に相談しましょう。
税理士に還付請求を依頼した場合の報酬
多くの税理士事務所では、相続税の還付請求に対して成功報酬制を採用しています。
成功報酬制は、「相続税の還付が成功した場合に〇%の報酬が発生する」というもので、反対に還付が認められなかった場合は発生しません。
税理士事務所によって料金設定は異なるため、契約前に確認することが大切です。
【Q&A】相続税の還付に関するよくある質問
最後に、相続税に関するよくある質問にお答えします。
相続税の還付金はいつ戻ってくる?
税理士に相談してから還付金が戻ってくるまでの期間は、早くて6か月、遅ければ1年ほどかかると考えましょう。
相続税の還付請求に時効はあるの?
相続税の還付請求は、相続税の申告期限から5年以内が期限(時効)です。
被相続人が死亡した日の翌日からだと、5年10か月以内となります。
土地を売却していても手続きはできる?
すでに土地を売却している場合でも、相続税の還付請求は行えます。
被相続人の相続財産に含まれていた土地が対象です。
延納・物納をしている場合はどうなる?
相続税の延納または物納を選択している場合でも、相続税の還付請求は行えます。
還付金が延納額を上回れば、今後の支払いは不要です。
還付請求により税務調査が入る可能性は?
還付請求により、税務調査を誘発してしまう可能性はあると言えます。
不安な場合は、あらかじめ税理士に相談すると安心です。
相続税の還付請求のご相談は税理士法人吉本事務所へ
相続税の還付請求のご相談は、税理士法人吉本事務所へお任せください。
当事務所には相続専門の税理士が在籍しており、600件を超える申告実績とノウハウを活かして、お客様のご状況に合わせた有利な申告をサポートしております。
「相続税を払いすぎたかもしれない」と少しでもご不安があれば、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。
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まとめ
相続税の還付とは、以前の申告で払いすぎた分を返してもらうことで、「更正の請求」という手続きを指します。
税務署に認められれば払いすぎた分が還付されるため、被相続人が死亡した日の翌日から5年10か月以内に手続きを行いましょう。
まずは申告内容を見直す必要があるので、信頼できる税理士に相談してみることをおすすめします。