【税理士が解説】不動産を活用した3つの相続税対策|節税できる理由や方法、注意点
不動産は相続税対策に活用できますが、正しい知識をもって実行することが大切です。
単に不動産を購入するだけでは、結果的に資産を減らしてしまう恐れがあります。
本記事では、不動産を活用した3つの相続税対策や注意点を税理士が解説します。
節税できる理由から詳しく解説しているので、相続税対策を検討している方はぜひ参考にしてください。
<この記事の監修者> 吉本 貴幸(よしもと たかゆき) 税理士法人吉本事務所 代表社員 税理士・行政書士 大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。 |
不動産で相続税対策ができる理由
不動産で相続税対策ができる理由は、主に以下の2つが挙げられます。
相続税評価額が現金より低いから
相続税評価額とは、相続税を計算するための財産の価額を指し、財産の種類(現金、土地、建物など)ごとに相続税評価額の計算方法が異なります。
現金の相続税評価額は額面の通り(時価)となる一方、不動産の相続税評価額は一般的に時価の80%に留まるため、不動産を相続するほうが相続税を節税できる場合があります。
イメージとしては、1億円の現金を相続すると1億円に対して相続税がかかりますが、1億円の不動産を相続すると8,000万円に対して相続税がかかるので、相続税の対象となる財産が減る仕組みです。
なお、不動産の相続税評価額は、先述の通り土地と建物に分けて計算します。
建物 | 固定資産税評価額×1.0 ※固定資産税評価額と同じ |
土地 | 路線価方式=路線価×各種補正率×面積 倍率方式=固定資産税評価額×倍率 |
路線価・倍率は、国税庁の財産評価基準書をご参照ください。
詳しい計算方法は、以下の記事で解説しています。
不動産の相続税評価額の計算方法を税理士が解説
小規模宅地等の特例を適用できるから
小規模宅地等の特例とは、事業用、居住用、賃貸用に使っていた宅地等(土地・権利)の相続税評価額を最高400㎡の80%まで減額できる制度を指します。
たとえば、居住用に使っていた土地(200㎡)の相続税評価額が4,000万円の場合、小規模宅地等の特例を適用できれば、相続税評価額が800万円まで下げられるイメージです。
適用するには一定の要件を満たす必要がありますが、相続税を軽減できる代表的な特例の一つです。
不動産を活用した3つの相続税対策
不動産を活用して相続税を節税するには、以下の対策が効果的です。
1.賃貸物件を経営する 2.不動産賃貸業を法人化する 3.不動産を生前贈与する |
順に解説します。
1.賃貸物件を経営する
賃貸物件の相続税評価額は、入居者の権利を差し引いて計算するため、自用の場合より相続税評価額が下がります。
また、小規模宅地等の特例も適用できるため、賃貸マンション等の経営は相続税対策として有効な場合があります。
建物部分の計算方法 | 自用の場合の相続税評価額×(1-借家権割合30%×賃貸割合) |
土地部分の計算方法 | 自用の場合の相続税評価額×(1-借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合) |
※借家権割合は一律で30%
※借地権割合は国税庁の財産評価基準書を参照
ただし、慎重に検討しなければ、結果的に資産を減らしてしまう恐れがある点に注意が必要です。
詳しい注意点は、後ほど解説します。
2.不動産賃貸業を法人化する
個人で不動産賃貸業を経営している場合は、法人化によって相続税を節税できる場合があります。
相続税の対象は個人の財産に限られるため、法人として不動産を所有すれば個人の財産を減らせるほか、家賃収入が法人の利益となり、財産の増加を抑制できるのもメリットです。
また、家族へ適切に役員報酬を支払うことで、贈与税と相続税の両方を節税できます。
詳しくは、以下の記事で解説しています。
相続税対策に有効な法人化を税理士が解説
3.不動産を生前贈与する
今後、所有している不動産の価格が上がりそうな場合は、相続時精算課税制度を適用して生前贈与すれば相続税を節税できる場合があります。
相続が発生すると制度を適用した財産は相続税の対象として扱われますが、相続税の計算には贈与時の価額を用いるためです。
また、所有している不動産が賃貸物件であれば、建物だけでも子へ贈与することで財産の増加を抑制できます。
なお、相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子または孫へ財産を贈与する場合に選択できる制度です。
基礎控除額の110万円に加えて、2,500万円までは贈与税がかかりません。
不動産で相続税対策をする際の注意点
不動産を活用した相続税対策は、必ずしも成功するとは限りません。
特に、以下の3点には注意してください。
デメリットを踏まえて検討する
不動産を活用した相続税対策には、以下のようにデメリットもあります。
・価格や家賃が下落する恐れがある ・相続時に遺産分割しにくい ・購入や維持に多額の費用がかかる ・売却に時間や手間がかかる ・空室が埋まらないリスクがある など |
新たに賃貸物件を購入または建築する場合は、より慎重に吟味しなければなりません。
細かくシミュレーションをしながら、自身の状況に適した相続税対策を検討しましょう。
節税目的のみで不動産を購入しない
過度な相続税対策は税務署に否認されるリスクがあるため、節税目的のみで不動産を購入することは避けましょう。
実際に、金融機関からの借入金で相続発生前にマンションを購入された事例では、節税目的であることが認定され、約3億円の追徴課税が発生しています。
「借金をして不動産を購入すると相続税対策になる」と聞いたことがあるかもしれませんが、借入金でも自己資金でも結果は変わらないため、自己資金に余裕があるなら借金をする必要はありません。
なお、老後資金や納税資金を残しておくために借入をする方法もあります。
税理士に相談しつつ計画的に進める
先述の通り、不動産を活用した相続税対策にはさまざまなデメリットやリスクがあります。
一時的な節税だけでなく全体を見通した判断が求められるため、税の専門家である税理士に相談することが大切です。
また、相続発生前3年以内に新しく賃貸を開始した土地は、小規模宅地等の特例が適用されたり、法人が相続発生前3年以内に購入した不動産は、相続税評価額でなく時価で評価されたりなど、相続が発生した時期によって取り扱いが変わる場合があります。
要するに、相続税対策は計画的に進める必要があるので、できるだけ早く検討・実行すべきと言えます。
不動産を活用した相続税対策は税理士法人吉本事務所へ
不動産を活用した相続税対策なら、税理士法人吉本事務所にお任せください。
相続税は相続財産が多ければ相当な負担がかかりますが、相続発生前であれば時間をかけて対策することで相続税を大幅に節税できます。
当事務所では、100件以上の相続税申告を担当した相続専門の税理士が、お客様のご状況やご要望を丁寧にお伺いし、最善の対策をご提案いたします。
相続税のご相談は初回無料でお受けしていますので、些細なことでもぜひ税理士法人吉本事務所までお気軽にお聞かせください。
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まとめ
不動産を活用した相続税対策は、主に以下が挙げられます。
1.賃貸物件を経営する 2.不動産賃貸業を法人化する 3.不動産を生前贈与する |
ただし、必ずしも成功するとは限らないため、全体を見通して判断することが大切です。
相続税の分野は専門性が高く、税理士によって知識も経験も大きな差が生じるため、後悔のないよう信頼できる税理士に相談しましょう。