ゆとりあるセカンドライフiDeCoの勧め
今回は、なかなか考えるのも嫌になる将来の蓄えのお話です。
1.年金て幾ら貰えるの?
国民年金はずばり、年間77万9,300円です。ただしこれは20歳から60歳まで、学生免除や滞納をする事もなく、満額払ったと仮定してかつ、今時点での支給額です。月額で見ると約65,000円。ここから払っていない期間があればどんどん減っていきます。
法人にお勤めの方はここに厚生年金が加算されることになるので、これよりは多いですが(男性平均は18万円/月、女性9万円)それでも、今のこの世の中潤沢とは言えません。
自分の将来を憂いても仕方がありません。ただ、このまま貯蓄もままならずに老後を迎えても、ゆったりとしたセカンドライフなんか夢のまた夢という事です。
2.iDeCoって?
iDeCo=個人型確定拠出年金と言います。
一言でいえば追加年金。自分で年金を毎月積み立てて運用して増やす、いわば投資と年金の中間に位置するものと解釈できます。
運用商品には投資信託商品と元本確保型商品があります。
iDeCoは拠出した資金の運用を委託する点で一種の投資信託とも言えますが、通常の投資信託と違い、4つの特徴があります。
(1)お金を払った年のメリット
税金の計算過程におけるiDeCoは所得控除の算定時に加算する一要素であり、税額計算上、国民年金や厚生年金と同様『社会保険料控除』として計算します。
この社会保険料控除は、所得税・住民税の計算上払った金額そのまんま減額する事が出来ます。下は国税庁HPより抜粋した所得税率の速算表です。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,976,000円 |
左の欄に自分の課税所得金額を当てはめ、適用税率を調べて、iDeCoで支払った金額と掛け合わせた分が税金の少なくなる額です。住民税はシンプルに10%×iDeCo支払い額です。
例)課税所得400万円の人が年間50万円のiDeCoに加入した場合。
【所得税】
(イ)元の金額:400万円×20%-427,500円=372,500円
(ロ) iDeCo加入後:(400万円-50万円)×20%-427,500円=272,500円(▲100,000円)
【住民税】
500,000円×10%=▲50,000円
当然の話ですが、節税にはなるもののキャッシュフローとしては
500,000円-(100,000円+50,000円)=350,000円
が、年間の支出増となり、後述のリスクもある為、iDeCoは節税商品ではなく、将来設計上、貯蓄の選択肢の一つと捉える事が本来の趣旨にかなっていると言えます。
NISAとよく対比されますが、NISAとは非課税(運用)口座です。株や投資信託を売買した際の差分利益は非課税ですが、当該口座へ預け入れた、または株を買った原資(元本部分)について、所得税の計算上、所得控除などの適用は受ける事は出来ない反面、元本等の入出庫が自由という点で性質が異なります。
(2)中途解約不可のリスク
iDeCoは年金の性質を有しており、国民年金や厚生年金が受給資格放棄を以てしても、支払い拒否が出来ないのと同様、基本的に加入後は中途解約不可(掛け金の減額・停止は可能)です。
その為、老後の生活設計も大切ですが、今時点の生活費がひっ迫しては本末転倒なので、掛け金の設定も含め、綿密な計画が必要です。
※基本的な商品の性質から停止した場合も後述の口座管理手数料は発生します。
(3)ランニングコストと元本毀損リスクの発生
上述の通りiDeCoの運用方式は大別して二種、投資信託商品と元本保証型商品がありますが、いずれにも口座管理料及び信託報酬等が発生します。両者の違いはリターンの期待値の違いに
あり、当然そのリターンの期待値の分だけ元本毀損リスクが発生します。
(4)貰う時の軽課税率
さて、将来実際にお金を貰える段になれば、お金が入ってきます。非課税ではありませんが、税制上優遇された内容になっています。
受取時期は60歳以上、ただし、加入期間10年以上とされているので、例えば54歳から加入したら、54+10=64以降という風に60歳を超えても受け取れないなどケースバイケースが生じます。また、元の性質が年金である事から加入開始は60歳未満という制限が設けられており、また年金受取までに加入者(支払者)が死亡した場合、相続人が継承すべき相続財産として取り扱われる事となります。
また、受取方法は以下の二つ。
(イ)一時金として(いっぺんに)受取る場合
iDeCoをいっぺんに受け取る場合には、退職金と同等の扱いになります。
退職金にかかる所得の計算方法は以下の式で計算されます。
退職所得=((退職金等)-(退職所得控除額))/2
退職所得控除額というのが少しややこしいのですが勤続年数が20年までは勤続年数×40万円、20年超の場合は800万円+(勤続年数-20年)×70万円として計算します。
iDeCoの場合、この勤続年数の代わりに加入期間を当てはめます。
退職所得は、他の所得金額とは別建てで上の所得税率を当てはめる事になるので、退職所得控除額を下回れば税額は0となり、上回っても税額は他の所得と比べてかなり少なく抑えられるものとなります。
(ロ)年金として(毎年)受取る場合
iDeCoを毎年受取る場合にはこれも年金と同じ扱いになり、税額・税率が抑えられる計算がなされます。
公的年金にかかる所得の計算は、65歳未満では70万円、65歳以上では130万円を控除します。この場合にも税額計算上低く計算されるように設定されています。
3.どっちがお得?受け取り方
これは各個人毎の事情が異なる為、一概に論ずる事は出来ません。以下に考え方の一例を記載します。
(1)一時金で受け取る方が得なケース
一時金で受け取る場合、退職金と同じ扱いになります。その為、当然他の退職金があれば、合算したり退職所得控除額の年数を減らしたりしなければならなくなります。
よって、会社から受ける退職金等が無いケースが該当します。
また、裏技として退職金を受け取ってから15年経過すれば、iDeCoの計算に組み込む必要がなくなるので、早期退職をして退職金を受け取った方は15年経過してからiDeCoを受け取る事で、退職所得控除額を二重取りする事が可能になります。
(2)毎年受け取る方が得なケース
(1)と逆です。退職金を別で受け取れる場合には、年ごとに受け取って、所得の種類を分けた方がそれぞれの控除額をフルに活用できるので、こちらの方が得になるケースが出てきます。ただし、こちらも当然他の公的年金と合算する事となる為、他に受け取れる年金がある場合、それと合算した結果適用される税率により判断する必要があります。
また、公的年金(iDeCoも含めて)は雑所得として税金を計算する事となり、雑所得はほかの所得と合算する事になります。他の所得(例えば不動産や事業)がある場合、それらと合算し、超過累進税率により課税がされる事になる為、非課税どころか思わぬ高額な税金が課されるケースもあり得るので、注意が必要です。
これらは税金のみを考慮したシミュレーションです。退職金を住宅ローンの早期償還の為の原資とする事で利息支払い分を抑える、退職金+iDeCoの合計額が退職所得控除額を下回る、などのケースや、逆に老後の生活資金として毎年受給したいなどの考え方もあろうかと思います。
これらを考えあわせたシミュレーションは難解、または不慣れな計算になるだろう事から、iDeCo加入により、どの程度ご自身の税金が安くなるのか、受取をされた際、どの程度の税金がかかってくるのかなどは専門家へのご相談をお勧めします。
4.まとめ
昔はよかった、という言葉はよく聞きますが、殊、年金に関しては先細りが目に見えています。昔より今、今より将来、年金はどんどん目減りしていくし、公的年金のみに頼っていても生活が立ち行かない将来が待っているのは経済に長けていても長けていなくても何となくわかる話です。今回のお話は投資というよりも効率の良い老後の貯蓄です。投資は投資で必要だと思いますし(でないと資産が増えないですしね)色々な方面での資産運用の方式を考えておくべき話と思います。
(2018年8月記載)
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