ペナルティの税金(1) 加算税・延滞税
日本において所得がある方は、個人事業者、法人とも確定申告を行わなければなりません。
これを正当な理由なく、かつ一部例外の申告義務の発生しないケースを除き申告を怠った、税金を納めなかったなどの場合に加算税・延滞税というものが発生するケースがあります。
1.種類・概要
(1)加算税
大別して以下4種ですが、納めるべき税金を適正に収めなかった際に発生するいわばペナルティです。ペナルティの名の通り納めるべき税金の不足額(本税)とは別途支払いをしなければいけないものになります。
尚、加算税には免税点が定められており、納付額5千円未満の場合は発生しません。
(1)過少申告加算税
このケースは申告を行っているものの、その申告額・納付額が過少だった場合に、修正申告書の提出や税務署から処分を経て課せられます。
加算税率は10%、ただし追加で払うことになった本税部分が元々納付していた税額(期限内申告納税額)と50万円の内、多い方の金額を超える部分の金額は更に5%加算されて課税されます。
例)当初納付額が30万円、修正後納付額80万円の場合
30万円<50万円・・・50万円
(50万円-30万円)×10%=2.0万円
(80万円-50万円)×15%=4.5万円
計6.5万円
(2)無申告加算税
確定申告書を提出しないといけない方が提出期限までに提出せず、かつ納付しなければいけない税金がある場合に発生します。加算税率は本税未納部分50万円までは15%、50万円を超える部分については20%が課されます。ただし、税務署から指摘される前に自主的に期限後申告納付した時は一律5%に軽減されます。
例)申告をしていなかったが、税務調査の結果、60万円の納付義務が発生した。
50万円×15%+(60万円-50万円)×20%=95,000円
(3)不納付加算税
確定申告書を提出して、納税のみを忘れていたパターンなどが当てはまります。加算税率は本税未納部分の10%。ただし、こちらも(2)同様、税務署から指摘される前に自主的に納付した場合は一律5%に軽減されます。
例)確定申告した結果20万円の納付義務が発生したが、納付を怠った。
20万円×10%=2万円
ただし、上記の軽課・猶予規定は税務調査による指摘がある事を予見した場合は適用されません。つまり、税務調査が来た時点で『時すでに遅し』という事になります。
(4)重加算税
(1)〜(3)の加算税が課される場合で、事実の隠蔽などにより過少申告した、または申告を怠ったケースが該当します。税率は申告を行っていた場合は過少申告加算税・不納付加算税率に代わって35%、無申告だった場合は無申告加算税率に代わって40%が課税されます。
例)意図的に売上を隠蔽し申告をせず100万円の納付義務が発生、重加算税の対象とされた。
100万円×40%=40万円
(2)延滞税
延滞税は納めるべき税金を法定納付期限までに納付していない場合に課されます。
加算税は税務署に決定された金額が変動しないのに対し、延滞税は不納付の期間に応じ日数計算がなされるので、納付金額が変動します。いわば納付すべき税額に対する利息のような性質を有します。
税率は原則としては納期限から2月経過するまでの日数は、7.3%と『特例基準割合+1%(下表(1))』を比較、2月経過以降に対応する日数は14.6%と『特例基準割合+7.3%(下表(2))』を比較してそれぞれ低い割合を適用する事となります。よって、実務上は下表の数値を基に延滞税は計算されること
期間 | 割合 | |
-1 | -2 | |
平成26年1月1日から平成26年12月31日 | 2.90% | 9.20% |
平成27年1月1日から平成27年12月31日 | 2.80% | 9.10% |
平成28年1月1日から平成28年12月31日 | 2.80% | 9.10% |
平成29年1月1日から平成29年12月31日 | 2.70% | 9.00% |
平成30年1月1日から平成30年12月31日 | 2.60% | 8.90% |
※上表は国税庁HPより抜粋。
例)平成29年3月31日期限の申告納税額が過少だった為、20万円の納付が新たに発生した場合
(本税の納付日:平成30年4月1日)
20万円×2.70%×61日/365日+20万円×9.00%×214日/365日
+20万円×8.90%×90日/365日
といった具合に年度ごとに率を適用して計算していく(単利計算)事となります。
なお、延滞税についても免税点が定められており、納付額が1万円未満の場合は発生しません。
2.まとめ
今回紹介した加算税・延滞税は上述の通り5種類ですが、発生要因としては税務調査に伴う修正申告や決定等が考えられます。これを受け、本税の増額・発生に伴い、内容によりいずれかが発生する訳ですが、実務上は申告の修正があった場合、所得税・法人税本税の未納部分、各種加算税、期間経過に伴う延滞税のほか、所得金額修正に伴う住民税、事業税、健康保険料と所得金額を受けて連動する税金等が全て見直しされ、それらは修正した際、同時期に納付義務が発生します。(また、地方税においても加算金、延滞金が同様に発生します。)
そうなった場合、当該年における金銭的負担は計り知れないものとなる可能性もある為、正しい金額で申告を期限内に完了し、適正額を納付しておく事が重要となる次第です。
(2018年6月記載)
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